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はぐくみ企業年金で年金が減る?知らないと損する制度の落とし穴

お役立ち情報
監修者
竹村 直浩
竹村 直浩

<経営管理のプロ・数多の組織経営>
会計事務所経験からキャリアをスタート。
約30年間にわたりデータベースマーケティング、起業のみらずBPO業務および新規事業の立案に従事。
現在は、自らが代表を務める会社の経営の傍ら、経営管理および新規事業立案等の業務委託を請け負う

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はぐくみ企業年金に加入すると、将来受け取れる年金額が減るといった声が聞かれます。実際、この制度は社会保険料の軽減につながる一方で、公的年金や給付金への影響がある点に注意が必要です。本記事では、はぐくみ企業年金の仕組みから公的給付との関係、実際にどれほどの減少が起こるのかをわかりやすく解説します。加入を検討している方は必見です。

はぐくみ企業年金とは

はぐくみ企業年金とは、企業が従業員の退職後の生活を支援するために設けた年金制度の一つです。この制度は確定給付企業年金であり、従業員の給与の一部を企業が基金に拠出し、退職後に年金または一時金として受け取ることができます。対象となるのは、厚生年金に加入している70歳未満の従業員で、パートやアルバイトなどの非正規雇用者も条件を満たせば加入可能です。

掛金の設定は柔軟で、1,000円単位で給与の20%まで拠出できます。運用については生命保険会社などが担い、元本保証型の商品が中心となるため、低リスクで着実な資産形成が可能です。

以下に制度概要を表で整理します。

項目内容
加入対象厚生年金加入者(70歳未満)
拠出可能な掛金額給与の最大20%まで(1,000円単位)
運用方式元本保証型(保険会社などが管理)
給付形式一時金または年金形式で受給可能
受給開始時期原則60歳以降(退職時も可)

企業にとっては退職金の平準化と社会保険料の負担軽減が期待され、従業員にとっても税制上のメリットがあるため、双方に利点がある制度といえます。

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はぐくみ企業年金に加入すると年金が減るのか?

この制度の一番の特徴であり、同時に注意点でもあるのが「給与が減った」と見なされることで、社会保険料の基準となる報酬月額が減少する点です。前払い退職金として拠出される掛金は、報酬に含まれないため、結果として社会保険料の算定基礎額が小さくなります。

そのため、将来受け取る公的年金や各種社会保険給付額も減少するリスクがあるのです。影響が出る主な給付項目とその理由は以下の表に示します。

給付種別減少の要因
老齢厚生年金報酬比例部分が減る
障害厚生年金障害等級によっては影響が顕著
遺族厚生年金遺族給付額の計算基礎が低くなる
出産手当金標準報酬日額に基づいて支給額が変動する
育児休業給付金賃金日額に基づくため掛金拠出で算定額が低下
介護休業給付金標準報酬日額の低下が影響
雇用保険の給付離職後の失業給付額も基礎額の低下で減少

具体的なシミュレーションで見てみましょう。たとえば、30歳の従業員が月2万円を30年間拠出し続けた場合、年金受給額は約39,000円減少する可能性があります。また、出産手当金が1日あたり500円、育児休業給付金が1日あたり700円減るといった試算もあります。これは一時的なメリットと将来的な影響のバランスを慎重に見極める必要があることを意味しています。

メリットとデメリットを理解する

制度のメリットとデメリットをきちんと理解することで、自分にとっての最適な選択が可能になります。以下にそれぞれを整理します。

項目内容
主なメリット税負担軽減、手取り収入増加、元本保証、安全な資産形成
主なデメリット年金や給付の減少、制度理解不足による誤解、運用利回りが低い可能性

手取り収入が増えるという短期的な利点は明らかですが、将来的な給付の減少がじわじわと効いてくるリスクも存在します。特に、育児や介護といったライフイベントと密接に関わる社会保障制度への影響は無視できません。制度の導入時には、企業がその点を十分に説明し、従業員の選択をサポートする体制が不可欠です。

他の年金制度との違いや併用の注意点

はぐくみ企業年金は確定給付型ですが、iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型DC(確定拠出年金)などは確定拠出型である点が大きな違いです。確定拠出型は運用結果次第で受給額が変動する一方、はぐくみ企業年金は事前に受給額を計算できるため、安定志向の従業員には適しています。

併用については可能ですが、以下の点に注意が必要です。

比較項目はぐくみ企業年金iDeCo(個人型DC)
種類確定給付型(DB)確定拠出型(DC)
掛金の拠出主体企業が一部または全額個人
税制優遇掛金は課税対象外掛金は所得控除対象
給付の変動性原則固定運用成果によって変動

税制面のメリットを最大限に享受するには、制度の上限や手続きの重複などを事前に確認し、無駄のない資産形成が求められます。

従業員への制度説明と企業側の対策

企業がこの制度を導入する際には、従業員に対して制度内容と影響を正しく伝えることが重要です。給与明細上の見た目の手取り増加だけに目が向きやすい反面、公的年金の減少や各種給付への影響は長期的な視点で理解しておく必要があります。誤解を防ぐためにも、具体的な影響額を提示した説明資料や、年齢・年収別のシミュレーション表などを活用することが効果的です。

また、制度導入に伴う事務手続きも企業にとっては負担となります。特に従業員の入退社や異動、休職などの際には迅速な情報更新が求められます。そのため、労務管理のDX化や外部社労士の活用、専用管理ソフトの導入も検討すべき対策です。こうした体制を整えることで、運用の安定性を保ちつつ、従業員の不安や混乱を軽減することが可能となります。

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まとめ

はぐくみ企業年金は、企業と従業員双方にとって有益な制度である一方、将来的な給付の減少というリスクを抱えていることを正しく理解する必要があります。短期的には手取り収入が増えるという魅力がありますが、それに伴って老後資金やライフイベント時の給付が減少することを知ったうえで制度を選択することが、より良い将来設計に繋がります。

企業は、制度導入時から継続的な情報提供とサポートを行い、従業員に対して「選ばせる」ではなく「理解して選ばせる」ことが重要です。年金や福利厚生は長期的な信頼にも関わる要素であり、透明性と誠実さをもって運用されることが期待されます。全体として、制度のメリットとデメリットをバランスよく伝えることで、信頼される職場環境の構築にも寄与するでしょう。