新入社員の受け入れにあたってよく耳にする「オンボーディング」と「OJT」。どちらも新人教育の場面で使われる言葉ですが、意味や目的には明確な違いがあります。本記事では、オンボーディングとOJTの定義や役割、実施内容の違いについて表を用いながら分かりやすく解説します。
オンボーディングとは?
組織への定着と文化理解を促すプロセス
オンボーディングとは、企業に新たに加わった社員が職場に馴染み、スムーズに業務を開始できるようにするための一連の受け入れ施策です。主に、企業文化の理解や人間関係の構築、業務理解の支援を目的としています。
項目 | 内容 |
---|---|
目的 | 組織への早期定着、モチベーションの維持、離職防止 |
実施対象 | 新卒・中途を問わず、企業に新たに入ったすべての社員 |
実施内容 | オリエンテーション、社内制度紹介、チーム紹介、業務の全体像理解支援 |
期間 | 入社後1週間〜3か月程度(企業によって異なる) |
担当 | 人事部、部署責任者、メンターなどチーム全体で対応することが多い |
オンボーディングの成功は、早期のパフォーマンス向上と長期的な定着につながるため、重要な組織施策の一つといえます。
OJTとは?
実務を通じてスキルを育てる教育手法
OJT(On the Job Training)は、日常業務を行いながら業務スキルや知識を習得する教育方法です。指導者(先輩社員や上司)が現場で直接指導し、仕事を通じて「実践的に学ばせる」ことがポイントです。
項目 | 内容 |
---|---|
目的 | 実務スキル・知識の定着、即戦力化 |
実施対象 | 業務を行う上で知識や経験が不足している社員(主に新人) |
実施内容 | 実務の実演、同行営業、作業指導、フィードバックなど |
期間 | 数週間〜半年程度(育成目標によって変動) |
担当 | 配属先の上司、教育担当者、先輩社員などがマンツーマンで対応することが多い |
OJTは単なる「仕事の手伝い」ではなく、教育目的を持った意図的な指導である点が重要です。
オンボーディングとOJTの違いとは?
目的とアプローチの違いに注目
両者は新人教育という共通点を持ちながらも、その目的や手法、実施体制において明確に異なります。
項目 | オンボーディング | OJT |
---|---|---|
教育の目的 | 企業文化への適応、職場への定着支援 | 実務スキルの習得、業務遂行力の向上 |
実施タイミング | 入社直後〜初期フェーズ | 業務に慣れ始めた段階〜一定期間 |
教育内容 | 組織説明、制度理解、人間関係構築 | 実務操作、判断基準、業務フロー、技術など |
指導者・関与者 | 人事、マネージャー、チーム全体 | 主に直属の上司・先輩社員 |
教育方法 | オリエンテーション、座談会、研修プログラムなど | 同行、実演、逐次指導、実地フィードバック |
成果の測定方法 | 社員アンケート、定着率、早期離職の有無など | 実務習得状況、KPIの進捗、担当可能業務の範囲など |
このように、オンボーディングは「組織に馴染ませる」フェーズ、OJTは「業務を任せられるようにする」フェーズと位置づけると理解しやすいです。
両者を連携させることで教育効果を最大化
切り離すのではなく「連動」させる設計が重要
オンボーディングとOJTはどちらか一方で完結するものではなく、段階的かつ連携させることが理想です。
教育段階 | 実施すべき内容の例 |
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入社初日〜1週間 | オリエンテーション、制度説明、社内ツールの使い方、配属部署紹介など(オンボーディング) |
1週間〜1か月 | 仕事の全体像理解、OJT計画作成、担当業務の習得開始(オンボーディング→OJTへの移行) |
1か月〜3か月 | 実践OJTの実施、定期的な進捗確認とフィードバック |
3か月以降 | 自立支援、業務責任の拡大、キャリア面談などの継続的サポート |
このように、フェーズに応じて役割を分けつつ、補完し合う仕組みが効果的な教育につながります。
まとめ
オンボーディングとOJTは、新入社員を早期に戦力化させるための重要な手法ですが、目的や内容は明確に異なります。オンボーディングで組織への安心感と全体像をつかませ、OJTで実務スキルを定着させることが理想の教育設計です。それぞれを正しく理解し、段階的に連携させることで、新人の定着率と成長スピードを大きく高めることができます。