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免税廃止案とは?インバウンドへの影響と年間2000億円超の税収増加について解説

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監修者
竹村 直浩
竹村 直浩

<経営管理のプロ・数多の組織経営>
会計事務所経験からキャリアをスタート。
約30年間にわたりデータベースマーケティング、起業のみらずBPO業務および新規事業の立案に従事。
現在は、自らが代表を務める会社の経営の傍ら、経営管理および新規事業立案等の業務委託を請け負う

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政府が打ち出した免税制度の廃止案が、観光業界に大きな波紋を呼んでいます。外国人旅行者にとって魅力だった“消費税免除”がなくなることで、買い物消費の低下が懸念される一方で、税収は年間2000億円を超える見込みです。本記事では、その制度の仕組みから影響、今後の対応策までを徹底的に解説します。

免税廃止案とは

訪日外国人観光客に対して消費税を免除する「免税制度」は、観光立国としての日本を支えてきました。制度の基本は、一定金額以上の購入や指定商品が対象となり、旅行者は購入時に税抜価格で買い物ができる仕組みです。2019年のピーク時には、免税制度の活用により訪日観光客の購買意欲が著しく高まり、家電、化粧品、日用品を中心に高額消費が相次ぎました。

しかし、制度の運用が長期化する中で、税の公平性や不正利用の懸念が強まりました。政府はこうした背景から、免税制度の見直し、ひいては廃止の方向で議論を進めています。制度の概要を以下の表にまとめました。

項目内容
対象者一定期間日本に滞在する外国人旅行者
対象商品一般物品(家電・化粧品など)、消耗品(食品・薬品)
最低購入金額一般物品:5000円以上、消耗品:5000円〜50万円以内
税免除方法店頭で即時免除(パスポート提示が必要)

この制度が観光客の消費行動に大きな影響を与えていたことは確かであり、廃止にあたってはその波及効果を慎重に検討する必要があります。


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訪日外国人への影響とは

免税制度が廃止されると、特にアジア圏からの観光客にとって、日本での買い物が割高に感じられるようになります。中国・台湾・韓国の旅行者は、消費型観光の割合が高く、日本の高品質な商品を「現地より安く購入できる」という魅力が薄れることになります。購買行動への影響は以下のように予想されます。

国・地域買い物支出の割合想定される影響
中国約40%家電・化粧品などの高額商品購入減
韓国約30%日用品・薬品のまとめ買いが減少
欧米約15〜20%影響は限定的、体験型観光重視

また、爆買い需要の減退により、百貨店や量販店にとってのインバウンド収益は縮小が避けられません。一方で、「体験」や「食」などの非物販型観光にシフトするチャンスとも言えます。


小売業界の反応と地域差

免税制度に強く依存してきた小売業界からは、廃止に対する強い懸念が出ています。大手百貨店では、免税売上が全体の15〜20%を占める店舗もあり、訪日客の消費額が減ることによる打撃は深刻です。地方都市でも、観光地の土産店や駅前商店街がインバウンド客によって成り立っている例は少なくありません。

影響の差は、店舗業態や立地によって大きく異なります。以下に、代表的な業種ごとの想定影響度をまとめました。

業種免税売上依存度影響度
家電量販店高(20%以上)非常に大きい
百貨店中(10〜20%)大きい
地方土産店中〜高中〜大
飲食店低(5%以下)小さい

このように、業界ごとに免税制度の恩恵が異なるため、影響の度合いもそれぞれであり、業種別の支援策が必要となるでしょう。


税収増加の実態とその前提

政府が期待する税収の増加は、約2000億円にのぼるとされています。これは免税購入分への消費税適用によるものですが、その前提には消費量が現状維持されることが必要です。廃止によって訪日客が減れば、税収効果も限定的になる恐れがあります。

その影響をより深く理解するため、免税制度廃止後の「損失」と「増収」の可能性を以下のように対比します。

項目内容
観光消費減少リスク高額商品購入の減退、滞在日数短縮
税収増効果消費税の課税適用、制度悪用の排除
地域経済の影響雇用減、宿泊・交通・飲食への波及
総合評価短期的には増収、長期的には景気減退リスクあり

税制改革は単純な増税以上に、産業や雇用への波及を見据えた多面的な評価が求められます。


世界の免税制度との比較

日本の免税制度は即時免除方式であるため、他国と比較して観光客の満足度が高い傾向があります。対照的に、欧米の多くの国は「還付型」で、帰国後に税金を申請・受取る必要があり、手続きが煩雑です。

以下に、主要各国の免税方式を比較しました。

国名免税方式利便性観光客評価
日本即時免除非常に高い高評価
韓国即時+還付併用高い高評価
フランス還付型低い(手続き必要)普通
アメリカ州により異なる非常に低い評価低

制度の見直しを進める際には、利便性と公平性の両立を図ることが国際競争力の維持に不可欠です。


今後求められる政策対応

免税制度を廃止する場合、その影響を緩和するための政策対応が不可欠です。体験型観光への移行支援、地方観光のプロモーション、店舗へのIT支援など、多角的な施策が必要です。

現実的な政策対応の方向性を表にまとめました。

対応策内容効果
デジタル観光通貨キャッシュレス化による消費促進地域経済の活性化
体験観光への転換伝統文化・自然体験の整備長期滞在・リピート促進
店舗支援制度POS・多言語対応補助小売業の競争力強化
段階的制度移行一部免税品の限定維持業界への移行負担軽減

観光客のニーズは「物」から「価値」へとシフトしており、制度改革を新しい観光戦略への転機と捉えることが求められます。


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まとめ

免税廃止案は、国家財政の健全化という面で評価される一方、観光立国としての魅力を損なう可能性も孕んでいます。税収の増加と観光支出の減少がせめぎ合う中、政府と民間の双方が、時代の変化に即した柔軟な対応を模索する必要があります。

廃止が決定されたとしても、それは終わりではなく、日本観光の再出発の機会と捉えることができます。消費税免除という「価格の魅力」から、文化体験やサービスの「価値の魅力」へと軸を移すことが、今後の観光振興にとって不可欠です。制度の見直しを契機に、日本ならではの観光価値を再発見し、世界に向けた新しい観光ビジョンを発信する時です。