2025年上半期、企業倒産件数が11年ぶりに高水準となり、特に人手不足が原因の倒産は過去最多を更新しました。深刻化する人手不足倒産の実態と、企業が今後取るべき具体的な対策を詳しく解説します。
2025年上半期企業倒産件数が11年ぶりの高水準
2025年上半期、全国の企業倒産件数は前年同期比約7パーセント増加し、4500件に達しました。これは2014年以来の高水準です。背景には、原材料費やエネルギー価格の高騰、円安進行による輸入コスト増が挙げられます。加えて、コロナ禍で融資に依存してきた企業が返済時期を迎え、資金繰りに行き詰まる例も増えました。1件あたりの平均負債額も増加しており、特に製造業や運輸業、建設業で大型倒産が相次いでいます。以下の表は過去3年間の倒産件数と負債総額の推移です。
【倒産件数と負債額推移】
年 | 倒産件数 | 前年比 | 負債総額(億円) |
---|---|---|---|
2023年上半期 | 3900 | – | 7800 |
2024年上半期 | 4200 | +7.7% | 8500 |
2025年上半期 | 4500 | +7.1% | 9600 |
この推移からも倒産増加が止まらないことが明らかです。
人手不足倒産が過去最多に達した理由と業種別実態
2025年上半期、人手不足による倒産は150件を超え過去最多を更新しました。全体倒産の約3割を占める規模となり、企業経営に深刻な影響を与えています。背景には少子高齢化による労働人口減少、都市部と地方の賃金格差拡大、需要回復に伴う人材需要増大が挙げられます。特に建設業、運輸業、介護業界では人手不足が事業継続の大きな障害となっています。以下の表は業種別倒産件数と人手不足倒産の割合を示しています。
【業種別倒産件数と人手不足倒産割合】
業種 | 倒産件数 | 人手不足倒産割合 |
---|---|---|
建設業 | 1050 | 32% |
製造業 | 800 | 18% |
運輸業 | 600 | 40% |
小売業 | 900 | 15% |
サービス業 | 1150 | 28% |
運輸業ではドライバー不足が深刻で、長距離輸送を続けられない企業も増加しています。
人手不足倒産を招く三つの背景要因
人手不足倒産には共通する背景があります。
人口減少と労働市場構造の変化
少子高齢化が進み労働人口は毎年減少しています。地方では若年層の都市流出が止まらず、採用活動をしても応募者が集まらない企業が増えています。
待遇競争と人材流動性の拡大
都市部大手企業は人手不足解消のため賃金や福利厚生を強化しています。これにより地方中小企業との待遇格差が広がり、採用競争で不利となり離職が進む悪循環が生まれています。
働き方改革による長時間労働制限
働き方改革関連法により時間外労働規制が厳格化され、これまで長時間労働で対応していた業種では人手不足が一層深刻化しています。
人手不足倒産を防ぐための企業の具体的対策
企業が人手不足倒産を防ぐには、採用強化だけでなく構造改革が求められます。
【人手不足倒産防止対策一覧】
対策 | 概要 |
---|---|
DX推進 | RPAやAI活用による業務効率化と省人化 |
外国人材活用 | 特定技能制度を活用し人材確保 |
定年延長とシニア活用 | 高齢人材を戦力として活用 |
待遇改善 | 賃金アップと福利厚生強化で定着促進 |
業務外注化 | 外注でコア業務集中と負荷軽減 |
DX推進は建設業や運輸業など多忙な業種でも有効で、クラウドシステム活用やオンライン営業、経理処理自動化などが労働時間短縮と省人化に繋がります。
企業規模別にみる人手不足倒産の傾向
倒産の傾向は企業規模によっても異なります。以下の表は2025年上半期における企業規模別倒産件数と人手不足倒産割合をまとめたものです。
【企業規模別倒産件数と人手不足倒産割合】
企業規模 | 倒産件数 | 人手不足倒産割合 |
---|---|---|
小規模企業 | 3000 | 35% |
中規模企業 | 1200 | 25% |
大規模企業 | 300 | 12% |
小規模企業ほど人手不足の影響を強く受けていることがわかります。
今後、企業が取るべき行動
倒産件数は今後も増加が予想されます。コロナ融資返済猶予終了による資金繰り悪化、世界経済不安定化に伴う原材料価格高騰、電力費上昇などが続いているためです。企業は人材確保戦略だけでなく、経営構造自体の見直しが求められています。例えば地方製造業ではロボット導入による生産性向上、外国人技能実習生から特定技能移行で定着率向上などが現実解となるでしょう。シニア人材や女性活躍推進、多様な働き方制度整備も同時に進める必要があります。
まとめ
2025年上半期の企業倒産件数は11年ぶりの高水準、人手不足倒産も過去最多を更新しました。人口減少、待遇格差、働き方改革など背景は複合的で、単なる採用活動だけでは対応できない状況です。生き残るためにはDX推進、外国人材活用、シニア雇用、待遇改善、業務外注化など多面的かつスピーディーな対応が求められます。人手不足倒産はすべての企業にとって現実的な課題であり、今すぐ対策を講じる必要があるでしょう。