価格表示に関するルールとして「総額表示義務」という言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。これは消費者が支払う税込金額を明確にすることを義務付けた制度です。しかし、具体的に何が義務で、どう表記すればよいのか迷う方も多いのではないでしょうか。本記事では、総額表示義務の基本から、必要な理由、正しい記載方法までを詳しく解説します。
総額表示義務とは?
消費税を含めた価格を表示する義務
総額表示義務とは、商品やサービスの価格を表示する際、消費者に支払わせる「税込価格」を明確に表示することを義務付けた制度です。対象は主に消費者向け取引で、商品タグ、チラシ、ウェブサイトなど、価格が表示されるすべての場面が含まれます。
この制度は、消費税法第63条に基づき、消費者が「支払うべき金額」を事前に正確に把握できるようにするための仕組みです。
義務が再度強化された背景
一時的に経過措置が取られていた時期もありましたが、2021年4月1日からは経過措置が終了し、再び「総額表示の完全義務化」が実施されました。
対象 | 内容 |
---|---|
対象者 | 事業者全般(消費者向けに価格表示する場合) |
対象物 | 商品価格、役務(サービス)の料金、利用料など |
表示媒体 | 店頭表示、広告、カタログ、ホームページ、SNSなど全般 |
表示の範囲 | 値札、POP、チラシ、請求書、Web表示まで広く対象となる |
総額表示義務の目的とメリット
項目 | 内容 |
---|---|
消費者の安心感 | 税込み価格を明確にすることで、支払い額の誤認を防止 |
トラブル防止 | 「表示価格と請求額が違う」といったクレームの回避に役立つ |
税制の透明化 | 消費税が社会制度として浸透している中で、価格への意識を高める役割がある |
比較しやすい | 税込み価格での比較がしやすくなり、購入判断がスムーズになる |
事業者にとっては表示の変更などの手間が発生しますが、長期的には消費者との信頼構築につながります。
誤解されがちな「総額表示義務」のポイント
「税別表示」はNG
税別価格のみを表示することは、現在では違法となります。たとえば、「1,000円(税別)」のような表記ではなく、「1,100円(税込)」のように、税込価格を明確にする必要があります。
補足表示は可能
税込価格を明示していれば、税抜価格を補足的に併記することは可能です。たとえば、「1,100円(税込1,000円+税)」のような表記はOKとされています。
表示義務があるのは「消費者向け」のみ
総額表示は、一般消費者を対象とした取引にのみ義務付けられています。法人間取引や業務用製品の価格表示には適用されません。
表示例 | 適法性 | 解説 |
---|---|---|
1,100円(税込) | 適法 | 総額表示の基本形 |
税込1,100円 | 適法 | 「税込」の文言を前に出しても問題なし |
1,100円(税込1,000円+税) | 適法 | 補足的に税抜価格を併記しても違反にならない |
1,000円(税別) | 違法 | 税抜価格のみの表示はNG(消費者向けの場合) |
総額表示義務に違反するとどうなる?
総額表示義務は法的義務であり、違反すると「消費税法違反」として行政指導や改善命令の対象となることがあります。消費者からの通報がきっかけとなるケースもあり、企業の信用を損なう可能性もあるため注意が必要です。
違反リスクの一例:
- 店頭ポップやチラシで税抜価格のみを記載
- ECサイトで「カートに入れるまで税込価格がわからない」構成
- 請求書で総額ではなく税抜価格しか表示されていない
総額表示の正しい記載方法と例
表記方法 | OK/NG | 解説 |
---|---|---|
3,300円(税込) | OK | 一般的な表記例。価格の直後に「税込」と表記する |
税込3,300円 | OK | 「税込」の位置は自由。ただし価格が税込であることが明確にわかるように |
3,000円+税 | NG | 税抜価格のみの表示は不可 |
3,000円(税別) | NG | 消費者向け取引では禁止されている表示 |
3,300円(うち消費税300円) | OK | 税込み価格と税額内訳を併記するのはOK |
複数商品の価格をまとめて表示する場合でも、すべての価格について税込表記を入れることが求められます。
総額表示対応のチェックポイント
- ホームページ、ネットショップ、チラシ、パンフレットなどすべての媒体で統一されているか
- 税込価格を明確にしたうえで、税抜価格や消費税額を補足できているか
- 社内の価格表示ルールが周知・徹底されているか
- 新価格改定時に総額表示になっているかをチェックしているか
まとめ
総額表示義務は、消費者にとって支払額を明確にし、安心して商品やサービスを選べる環境を整えるための重要なルールです。事業者にとっては手間がかかる面もありますが、消費者との信頼構築やトラブル防止の観点からも遵守すべき内容といえます。
価格表示を見直す際には、「税込価格の明示」を第一に考え、正確かつわかりやすい表示を徹底しましょう。