営業現場でよく使われる「〜できます」という表現が、実は成約率を下げてしまう原因になることがあります。なぜその言葉がNGとされるのか、本当に響く営業トークとは何かを解説し、選択肢を提示する提案型営業の方法を紹介します。信頼を獲得する言葉選びで、商談成功の確率を高めましょう。
「~できます」の営業トークが抱える課題
安心を与えるどころか、不信感を生む可能性
営業における「〜できます」は、一見すると前向きで頼もしい印象を与えるように思われます。しかし、その裏側には一方的な押し付けや、選択肢を奪う印象を与えてしまうリスクが潜んでいます。特に法人営業など、相手が複数人の意思決定者を抱えるケースでは、「できます」という断定的な表現が、逆に相手の不安を煽る要因にもなり得るのです。
たとえば、以下のようなやり取りを考えてみましょう。
営業トーク | 顧客の心情 |
---|---|
「それ、できますよ」 | 「本当に? 他社にも聞いてみようかな…」 |
「Aプランならこのような形で対応可能です」 | 「自社に合う柔軟な提案をしてくれた。信頼できるかもしれない」 |
「できます」という表現は、受け手によっては「根拠が曖昧」「対応の幅が狭そう」「本当にそれだけか?」と感じられてしまうのです。
提案型営業で信頼を獲得するトーク術
「提案+選択肢提示」のフレーズが効果的
提案型営業では、顧客に選択の余地を残しながら、こちらの意見をしっかり伝えることが大切です。そのためには、「できます」と言い切るよりも、「こういった形も可能です」「お選びいただけます」といった柔らかな表現を用いることで、顧客との距離感を保ちつつ信頼を築くことができます。
ここで重要なのは、「YesかNoか」ではなく、「A案とB案、どちらが貴社にとって有益でしょうか?」という提案スタイルに切り替えることです。
選択肢提示の例を以下にまとめます。
NG例 | 改善例 |
---|---|
「すぐ対応できます」 | 「緊急対応と通常対応がございますが、ご都合いかがでしょうか?」 |
「すべて可能です」 | 「ご希望の内容に対し、AパターンとBパターンのご用意がございます」 |
このように、具体的な案を提示することで、「選んでいるのはお客様自身」という構図が生まれ、信頼につながるのです。
顧客心理を理解する:選びたいのは「できる」ことではない
顧客は「どうなるか」より「どう感じるか」で判断する
顧客が求めているのは、単なる「できる/できない」という事実ではありません。「自分たちの課題がどう解決されるか」「どんな結果が得られるか」そして「その過程が納得できるか」が、商談の本質です。
したがって、営業パーソンは次のような姿勢で臨む必要があります。
- 相手の立場を考えた言葉選び
- 一方的な押し売りではなく、共に考えるスタンス
- 提案内容に対して裏付けや根拠を持つ
顧客にとって「選ばせてもらえる」ことは、自分たちが主導権を握っているという安心感にもつながります。「できます」ではなく「こういった方向性がございます」という表現により、自然と納得感のある提案へと導けるのです。
営業現場で使える!選択肢を与える表現例
明日から使える、具体的フレーズを紹介
現場での即応性を高めるために、「できます」から言い換えられる表現をいくつか紹介します。
- 「もちろん可能です」→「いくつかの方法がございますが、○○と○○のどちらがよろしいでしょうか」
- 「すぐ対応できます」→「緊急対応と通常対応がございます。ご希望に合わせて調整いたします」
- 「弊社なら解決できます」→「このような実績を基に、御社に合った解決策をご提案いたします」
このような表現を使うことで、顧客が「営業から押されている」と感じることなく、「自分で納得して選んだ」と思える商談が実現できます。
営業で使う表現の心理的インパクト
表現一つで、相手の印象が大きく変わる
営業トークは、ただ情報を伝えるためのものではなく、相手の感情や信頼感に直接働きかける手段です。特に初対面や提案の初期段階では、言葉の選び方が相手の印象を大きく左右します。
以下は、「~できます」を避けた方がよい理由を心理的側面から整理した表です。
理由 | 顧客への影響 |
---|---|
「できます」は一方的に感じられる | 相手が選択肢を持てないように感じ、警戒心を持つ |
自信満々すぎて根拠が見えない | 「それって本当に?」と不安感を抱かれる |
形式的に聞こえ、共感が生まれにくい | 誠実さや親身さが感じられず、印象が薄れる |
一方で、「~のようなご提案が可能です」「いくつか選択肢がございます」といった表現は、会話を柔らかくし、相手との信頼関係を築きやすくします。
提案型営業を成功に導くポイント
顧客との共創で、商談の質が大きく変わる
最終的に、営業は「売ること」ではなく「選んでもらうこと」が重要です。そのためには、顧客との共創関係を意識しながら、次の3つを大切にすることが求められます。
- 選択肢を与える
- 根拠と実例を示す
- 最終判断を委ねる
営業トークとは、単なる会話ではなく「信頼を形成するプロセス」です。信頼が得られれば、顧客の購買行動は自然に前進していきます。だからこそ、「〜できます」ではなく、「どのような提案が望ましいか」を共に考えるスタンスが欠かせないのです。
まとめ
「〜できます」は便利な表現ですが、営業トークにおいては慎重に使うべき言葉です。相手の選択肢を狭めるのではなく、提案と選択肢の提供を通じて、顧客との信頼関係を築いていくことが、成約率向上のカギとなります。
選んでもらう営業になるためには、「売る」ではなく「一緒に考える」姿勢が求められます。営業トークを見直し、言葉の力で顧客の心を動かす一歩を踏み出しましょう。