近年、政府主導のデジタル化の流れにより「脱ハンコ」が急速に進んでいます。特にコロナ禍を機に、リモートワークの普及とともに、物理的なハンコから電子的な承認へと移行する企業が増加しています。この記事では、脱ハンコの現状と企業が取り組むべき内容、導入のポイントについてわかりやすく解説します。
脱ハンコとは何か
紙と印鑑からの脱却を意味する業務改革
脱ハンコとは、これまで業務上の承認や契約などで使用していた印鑑(ハンコ)を使用せずに、電子的な手段で手続きを完了する業務スタイルへの移行を指します。これは単なる手続きの省略ではなく、業務効率化や生産性向上、コスト削減、リモート対応などを実現するための大きな一歩とされています。
かつては、「印鑑を押さないと契約が成立しない」といった慣習が根強くありましたが、現在では電子署名法や電子帳簿保存法の整備により、法的にも電子的な承認が認められるようになってきています。
脱ハンコの現状と普及の動き
大企業を中心に導入が進む一方で課題も残る
脱ハンコの動きは、行政だけでなく民間企業にも広がっています。特に上場企業やIT企業、外資系企業などでは、すでに契約や稟議、申請などの多くを電子化しており、印鑑を使う機会は激減しています。
一方で、**中小企業では脱ハンコの導入に慎重な傾向も見られます。**理由としては、システム導入に対するコスト負担、社内の理解不足、取引先の対応未整備などが挙げられます。
以下の表に、企業規模別にみた脱ハンコの導入状況を整理します。
企業規模 | 導入割合の傾向 | 導入の主な課題 |
---|---|---|
大企業 | 高い(70%以上が導入) | 社内規模が大きく完全移行に時間がかかる |
中堅企業 | 中程度(40〜60%が導入) | 一部部門のみに留まるケースが多い |
中小・個人事業 | 低い(30%未満が導入) | コストや運用ルールが未整備 |
企業が脱ハンコで得られるメリット
業務効率化やコスト削減だけではない効果もある
企業が脱ハンコを導入することで得られる主なメリットは以下のとおりです。
- 印刷・郵送コストの削減
- ペーパーレスによる保管スペースの削減
- 承認スピードの向上
- テレワーク対応の促進
- 承認履歴の記録と可視化による内部統制の強化
とくに承認スピードの向上は、営業部門や経理部門などで顕著な効果が出やすく、業務全体の流れを迅速にすることに直結します。
脱ハンコの導入に向けた検討ポイント
ルールの明文化と関係者の合意形成が鍵を握る
脱ハンコの導入には、単にツールを使うだけでは不十分です。社内外の承認フローを再設計し、それに合った運用ルールの整備が不可欠となります。
企業が導入時に検討すべきポイントは以下の通りです。
- 現在の業務フローの棚卸し
- 稟議・申請・契約書のどこを電子化するかの選定
- 電子署名・電子印の法的有効性の確認
- 社内規程の改訂
- 社員教育・マニュアル整備
- 取引先の理解と合意形成
また、特定の書類については紙と印鑑が引き続き必要となるケースもあるため、完全な脱ハンコではなく「部分的な電子化」からスタートすることも現実的な選択肢です。
導入に適した電子契約サービスとは
企業の規模や用途に合ったサービス選びが重要
電子契約を導入する際は、ツール選びも成功のカギとなります。以下は、国内で代表的な電子契約サービスと特徴の一例です。
サービス名 | 主な特徴 | 向いている企業規模 |
---|---|---|
クラウドサイン | 弁護士ドットコムが提供。法務対応に強い | 中堅〜大企業 |
GMOサイン | 金融業界にも強く、多機能 | 中小企業〜大企業 |
DocuSign | グローバル対応に強く多言語・多国通貨に対応 | 海外取引のある企業 |
サービスの選定では、価格・機能・セキュリティ・法的対応力・社内運用のしやすさなどを基準に比較検討するとよいでしょう。
まとめ
脱ハンコの流れは、単なる印鑑の廃止ではなく、企業の業務全体を見直す絶好の機会でもあります。とくにデジタル化やリモートワークが求められる今、印鑑の運用を見直すことで、業務効率化やコスト削減といった明確な成果を期待できます。
まずは自社の現状を把握し、どの業務から電子化を始めるべきかを明確にすることが、脱ハンコ成功への第一歩です。