企業の就業規則や労務管理の場面で「けん責」という言葉を目にする機会があります。
聞いたことはあっても、具体的な意味や懲戒処分としての位置づけ、処分の流れまで正確に理解している人は少ないかもしれません。
この記事では、けん責の基本的な意味、懲戒処分の種類、処分の進め方や注意点をわかりやすく解説します。
人事労務担当者、管理職、経営層の方はもちろん、従業員側の知識としても役立つ内容ですので、ぜひ参考にしてください。
けん責とは?
けん責とは、従業員が就業規則違反や職務上の非違行為を行った際に科される懲戒処分の一つです。
主に「口頭や書面による厳重注意」という比較的軽度な処分であり、将来の改善を促すことを目的としています。
項目 | 内容 |
---|---|
定義 | 従業員に対して反省と注意を促すため、文書や口頭で厳重注意する懲戒処分の一種 |
法的根拠 | 労働契約法第15条(就業規則の規定と周知)、民法第627条(信義則違反)など |
想定される行為 | 勤怠不良、軽微な服務規律違反、職場でのトラブル、小規模なミスやルール違反 |
目的 | 本人に反省を促し、今後の改善を期待する |
懲戒処分の中では最も軽い部類であり、ただし記録としては社内に残るため注意が必要です。
懲戒処分の種類とけん責の位置づけ
懲戒処分には複数の段階があります。
けん責の位置づけを理解することで、処分の重さを把握しやすくなります。
処分区分 | 内容 |
---|---|
けん責 | 口頭・書面での厳重注意 |
戒告 | けん責に類似するが、より強い注意の意味合いを持つ場合がある(企業によって異なる) |
減給 | 一定割合の賃金を減額 |
出勤停止 | 一定期間の就労を禁止し、無給扱いとする |
諭旨解雇 | 自己都合退職を促す退職勧奨的処分 |
懲戒解雇 | 即時解雇。最も重い処分で、退職金不支給などの付随処分も発生する場合がある |
けん責は「注意・警告段階」の処分であり、重い処分の予防線として機能します。
けん責処分の流れ
けん責処分を行う際は、企業側も適正な手続きを踏むことが求められます。
以下に一般的な流れを紹介します。
流れ | 内容 |
---|---|
事実確認 | 調査により違反行為の事実を確認する。本人へのヒアリングも含む |
本人への弁明機会 | 本人に事情説明の機会を与え、誤解や行き違いがないか確認する |
処分内容の決定 | 企業内の就業規則や過去事例を参考に処分内容を決定する |
通知・書面交付 | 書面や口頭でけん責を伝え、記録を残す |
フォローアップ | 処分後の改善状況やメンタル面のケアを行い、再発防止に努める |
手続きに不備があると無効とされるリスクがあるため、特に弁明の機会は重要です。
けん責処分の注意点
適正なけん責運用には、いくつかの注意点があります。
注意点 | 内容 |
---|---|
就業規則の整備 | 就業規則にけん責の定義・対象・手続きを明記し、社員に周知しておく |
処分の相当性 | 行為の軽重に見合った処分でなければ、裁判で無効とされるリスクがある |
記録管理 | 処分履歴を正確に記録し、一定期間後の抹消や軽減を検討する |
メンタルケア | 過度な叱責や孤立化を避け、本人の立ち直りを支援する |
処分後のフォローも含め、人事評価や今後の配置に配慮することが求められます。
けん責と人事評価・キャリアへの影響
けん責を受けると以下のような影響が考えられます。
影響 | 内容 |
---|---|
昇進・昇格の遅れ | 評価期間中に処分歴があると、昇格・昇進が見送られるケースがある |
賞与・評価への影響 | 評価が下がる可能性があり、賞与や昇給に反映されることがある |
キャリア形成 | 処分後の改善努力や信頼回復の取り組みが重要となる |
ただし、処分後の立て直しによって高評価を取り戻すことも十分可能です。
まとめ
けん責は、企業内でのルール違反や不適切行為に対する最も軽い懲戒処分であり、
本人への反省促しと改善期待を目的とします。
処分の流れを正しく理解し、適切に対応することで、組織の秩序維持と個人の成長の両立が可能になります。
この記事を参考に、けん責の基本知識と実務対応をしっかり押さえておきましょう。