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非上場化が増加している理由とは?企業が上場をやめる本当の狙いを解説

ビジネス
監修者
竹村 直浩
竹村 直浩

<経営管理のプロ・数多の組織経営>
会計事務所経験からキャリアをスタート。
約30年間にわたりデータベースマーケティング、起業のみらずBPO業務および新規事業の立案に従事。
現在は、自らが代表を務める会社の経営の傍ら、経営管理および新規事業立案等の業務委託を請け負う

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非上場化の流れが日本企業の間で広がりを見せています。上場は企業成長の象徴とされてきましたが、いまやその常識が見直されています。株主対応の負担や短期的成果の要求に悩まされる経営者たちが、あえて上場をやめる理由とは何か。この記事では、その背景と企業の新たな戦略に迫ります。

非上場化が注目される背景とは

短期志向と株主圧力からの脱却

上場企業は証券取引所での取引を通じて多くの資金を集められる一方で、株主への情報開示や業績説明の義務が伴います。特に近年は、短期的な利益を重視する株主の圧力により、中長期的な経営判断が難しくなる事例が目立つようになりました。企業価値の本質を追求するには、数年単位での戦略的施策が必要ですが、四半期ごとの決算報告に追われる上場体制下では、それが困難になるケースもあります。

さらに、株価に一喜一憂する経営体制は、従業員のモチベーション低下にもつながる要因となることがあります。このような環境から脱却し、企業としての独自性を保ちつつ経営判断を下すために、あえて上場を取りやめる企業が増えているのです。非上場化によって、経営者は中長期ビジョンに集中できる体制を整えることができ、より健全な企業運営が可能になると判断されているのです。


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非上場化の主なメリットとは何か

意思決定の機動性と経営効率の向上

非上場化のメリットとしてまず挙げられるのが、迅速な意思決定が可能となる点です。上場企業の場合、経営判断には多くの承認プロセスが必要で、実行までに時間がかかる場合があります。これに対し、非上場の企業では、経営陣が柔軟に判断を下せるため、変化の激しい市場環境にも素早く対応できます。

さらに、非上場になることで、IR活動や開示コストなどの維持費が削減され、その分のリソースを商品開発や人材育成に再配分できます。結果として、企業の内部資源が本来の業務に集中されるため、経営効率が高まります。下表に、上場と非上場それぞれの特徴を比較形式でまとめます。

観点上場企業非上場企業
意思決定の速さ遅くなりがち迅速な対応が可能
経営の自由度制限多い柔軟な戦略実行
情報開示義務法定で義務付け任意(信頼性は独自構築)
維持コスト高い(開示・監査・IR)抑えられる

上記のように、経営の自由度とコスト構造の面から見ても、非上場化には大きな優位性があることが分かります。


ファンドとの連携と資本再編の可能性

プライベートエクイティによる事業支援

非上場化を進める企業の中には、プライベートエクイティファンドと連携するケースが多く見られます。これらのファンドは、資本提供にとどまらず、事業再生や経営改善のためのアドバイス、さらには経営者の人材補強まで行うなど、深い関与を前提とした支援体制を敷いています。

実例として、老舗メーカーが事業再構築を目指して非上場化し、ファンド支援を受けて再成長を遂げたケースや、業績悪化により事業の見直しが急務だった企業が、非上場に切り替えたことで大胆な人員再配置を実行した事例などがあります。

以下のように、ファンド支援と上場維持の違いは、企業に与える影響も大きく異なります。

要素上場維持ファンド支援(非上場化)
経営判断の自由度株主の制約あり経営陣とファンドの合意で可
人材配置の柔軟性難しい(株主対応を優先)成長優先で配置転換可能
成長投資株主の目を意識長期視点で実行しやすい

このように、非上場化は資本再編と成長の再設計において、有効な一手となっているのです。


非上場化に伴うリスクと対応策

情報開示の減少と信頼維持のための工夫

非上場化により、情報開示の義務が緩和される一方で、企業の透明性に対する社会的信用を失うリスクが生じます。特に金融機関や取引先にとって、企業の経営内容が不明瞭になることは大きな不安要素です。このようなリスクを回避するため、非上場企業の多くは、自主的に統合報告書やESGレポートなどを発行し、関係者との対話を継続する仕組みを整えています。

また、M&Aや再上場を見据える企業では、非上場期間中の経営実績が再評価に直結するため、情報管理と開示のバランスを慎重に調整していることが一般的です。信頼の維持には、形式的な数値公開だけでなく、経営陣の価値観や行動方針を言語化して共有する姿勢が重要とされています。


今後の企業戦略の再定義

中堅企業やスタートアップに広がる新潮流

今後、非上場化の流れは一過性ではなく、企業の戦略的選択肢として定着していくと予想されます。特に自社のミッションを重視する中堅企業や、イノベーションに集中したいスタートアップにとって、上場は「ゴール」ではなく「手段のひとつ」に過ぎません。

加えて、東京証券取引所の市場区分見直しや、海外市場との比較における日本企業の上場コストの高さも、非上場化への後押しとなっています。企業が「何を成し遂げたいのか」を主軸に置いた経営を行うために、今後も非上場という選択肢は活用され続けるでしょう。


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まとめ

資本と経営を一致させる体制の構築へ

非上場化は、企業が自らの価値と信念に基づき、最適な経営体制を構築するための戦略的手段のひとつです。これにより、外部からの圧力を避け、事業本来の目的に集中することが可能になります。

経営の持続可能性、ステークホルダーとの関係性、企業文化の醸成など、非上場化の先には多くのメリットが広がっています。企業がこの変化を正しく活用できれば、日本経済全体の新たな成長の芽にもつながるでしょう。