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車の整備工場の廃業が過去最多に。背景にある5つの構造的問題とは

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監修者
竹村 直浩
竹村 直浩

<経営管理のプロ・数多の組織経営>
会計事務所経験からキャリアをスタート。
約30年間にわたりデータベースマーケティング、起業のみらずBPO業務および新規事業の立案に従事。
現在は、自らが代表を務める会社の経営の傍ら、経営管理および新規事業立案等の業務委託を請け負う

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全国各地で自動車整備工場の廃業が相次ぎ、2024年度は過去最多を記録しました。人手不足や経営者の高齢化、技術革新への対応の遅れなどが複雑に絡み合い、業界は大きな転換期を迎えています。本記事では、なぜ今これほどまでに整備業が苦境に立たされているのかを深掘りし、その背景と今後の可能性について整理します。

自動車整備工場の廃業が過去最多を記録した理由

2024年度、日本全国で自動車整備工場の廃業件数が過去最多となる445件に到達しました。これは倒産だけでなく、休廃業や解散などすべてを含んだ数値であり、業界全体がかつてない規模で縮小傾向にあることを示しています。とくに中小規模の整備事業者は経済的、人的、技術的な課題を抱え、経営を維持するのが困難な状況です。

以下は廃業件数の推移をまとめた表です。

年度廃業件数前年度比
2022312件
2023334件+22件
2024445件+111件

年を追うごとに件数は増加しており、この流れに歯止めがかかっていないのが現状です。

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整備士不足と高齢化がもたらす構造的問題

自動車整備工場では熟練した整備士の確保が急務となっています。厚生労働省の統計によれば、整備士の有効求人倍率は2022年度で5.02倍に達しており、必要人材の確保が困難な状況です。さらに、整備業の経営者自身も高齢化が進行し、後継者の確保が進まずに廃業に追い込まれる事例が増えています。

指標数値
整備士の有効求人倍率5.02倍
経営者の60歳以上比率57.0%
後継者不在率59.7%

このような人材と後継者の問題は、経営継続の根幹を揺るがしています。若者にとって整備業が魅力的に映らない現状にも課題があり、職業としてのブランディングの見直しが求められます。

技術革新と整備現場の乖離

自動車の進化が著しい現代、整備の現場ではその進化に追いつくための設備導入と技術習得が不可欠となっています。とくに、電子制御化された車両の「OBD診断」などは、高度な機器を必要とする作業であり、小規模工場では導入が困難です。

技術要件説明
OBD診断エンジンや電装系の異常を自動診断する制度。2021年より全車両で義務化。
電動化対応ハイブリッド車や電気自動車に対応した設備や知識が必要。
ADAS対応自動ブレーキなど先進安全装備の整備にも高度な技術が求められる。

これらの要素に対応できなければ、整備工場は淘汰される可能性が高まります。設備投資と技術習得の支援が不可欠です。

経営を直撃するコスト高と単価の低迷

現在、自動車整備業を圧迫している最大の要因のひとつが、部品や人件費の高騰です。さらに、保険会社による修理単価の抑制も業績を悪化させています。

コスト要因影響内容
部品価格の高騰原材料価格の上昇により仕入コストが増加。
整備士の人件費人手不足により人件費が上昇傾向。
保険修理単価の抑制保険会社による価格抑制で利益が出にくくなっている。

このように利益構造が崩れたままでは、資金繰りが悪化し、健全な経営が成り立たなくなるリスクがあります。

再生に向けた業界の取り組み

暗い話題が多い自動車整備業界ですが、回復に向けた具体的な取り組みも始まっています。たとえば、大手損保会社と整備業者団体による整備費の適正化、メーカーによる技術支援体制の強化などが進められています。

対策内容
単価の見直し保険修理の報酬を適正化し、整備工場の利益確保を目指す。
技術講習の普及ADASやOBD診断などの技術研修が活発化。
若年層へのアプローチ整備士養成学校との連携や奨学金制度の整備。

また、経営多角化を進める動きも見られ、洗車サービス、車検代行、カー用品販売など、新たな収益源の確保に乗り出している事例も増加しています。

地域経済と整備業の共存

とくに地方では、自動車整備工場の存在が地域社会において大きな意味を持っています。過疎地域では、整備工場がなくなることで車の維持管理が困難となり、高齢者の移動手段確保にまで影響を及ぼしかねません。こうした視点からも、自治体と整備業界が連携し、地域のインフラとして整備業を支える体制の構築が望まれます。

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まとめ

2024年度に過去最多を記録した自動車整備工場の廃業は、単なる景気後退の一環ではなく、構造的な業界課題の現れでもあります。人手不足、高齢化、技術革新への対応力の差、価格競争の激化など、複数の要因が絡み合い、抜本的な見直しを迫られています。

しかし、絶望的な状況ばかりではありません。制度改革、業界連携、人材育成、経営革新などの取り組みは、着実に進行中です。整備業の再生は、自動車社会を支える根幹の課題として、今後も国と業界全体が一体となって取り組むべきテーマとなるでしょう。