会社の売却には多くの手続きが伴いますが、その中でも特に重要なのが「税金」の問題です。売却益に課税される所得税や住民税、法人売却の場合の法人税など、正確な知識がないと後で大きな損失につながる可能性があります。この記事では、会社を売却する際にかかる税金の種類や計算方法、節税のポイント、注意すべき点について詳しく解説します。
会社売却にかかる税金の種類とは?
売却方法によって異なる課税対象
会社売却には「株式譲渡」と「事業譲渡」の2つの主要な方法があり、それぞれで課税される対象や税率が異なります。
売却方法 | 主な税金 | 税率の目安 |
---|---|---|
株式譲渡 | 譲渡所得税(所得税・住民税) | 約20.315%(一律) |
事業譲渡 | 法人税(売却益に対して課税) | 実効税率約30%前後(法人による) |
どちらの方法を選ぶかによって税負担は大きく変わるため、売却前のシミュレーションが重要です。
株式譲渡時の税金計算の例
株式譲渡では、個人が保有していた自社株を他者に売却する形になります。
項目 | 内容 |
---|---|
売却価格 | 1,000万円 |
取得価格 | 300万円 |
譲渡所得 | 700万円(売却価格-取得価格) |
所得税・住民税 | 約142万円(700万円×20.315%) |
譲渡益が大きくなるほど課税額も増えるため、取得価格の証明や過去の株式発行記録の管理が重要です。
事業譲渡時の税金とは?
事業譲渡では、法人が保有する資産・負債・取引関係を一括または部分的に譲渡します。
課税対象 | 解説 |
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売却益 | 売却額から資産の簿価を差し引いた金額が利益として課税対象 |
消費税 | 対象資産により課税対象(不動産や在庫には注意) |
印紙税 | 契約書に応じて発生(1万円〜10万円が一般的) |
法人税の実効税率は約30%前後で、事業譲渡の方が税負担が大きくなることが多いです。
節税のためのポイント
ポイント | 解説 |
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株式譲渡の選択 | 個人がオーナーであれば、株式譲渡の方が税率が低い |
取得価格の正確な管理 | 適切な記録があれば、譲渡所得を圧縮できる |
売却タイミングの調整 | 年内と年明けで課税年度が変わるため、所得調整が可能 |
顧問税理士との連携 | 早期に相談することで、売却スキーム全体を最適化できる |
安易な判断は将来の税負担につながるため、専門家の意見を必ず仰ぎましょう。
売却時に注意すべきその他の点
注意点 | 内容 |
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契約書の内容 | 税金の取り扱いを含め、条項の確認が必要 |
従業員・取引先への対応 | 売却による関係変更の影響を最小限にする配慮 |
知的財産や債権の処理 | 引き継ぐ範囲を明確にし、トラブルを防止 |
複数年にわたる支払い条件 | 分割払いでの売却は税務処理が複雑になる可能性あり |
単に価格だけでなく、取引のスキームや実行方法にまで配慮する必要があります。
まとめ
会社を売却する際にかかる税金は、「株式譲渡」と「事業譲渡」で大きく異なります。税率や課税対象を正しく理解することが、手元に残る利益を最大化するための第一歩です。売却スキームの選定から契約、税務処理に至るまで、信頼できる専門家と連携しながら進めることが重要です。将来的に会社売却を検討している方は、今から準備を始めることで、より有利な条件での実現が可能になります。