従来の階層的な組織構造に代わる新たな組織モデルとして注目される「ティール組織」。個人の自主性や目的意識に基づいて動く柔軟な仕組みは、変化の激しい現代社会において効果的な働き方とされています。本記事では、ティール組織の基本概念とその3つの特徴、さらに円滑な運営方法について詳しく解説します。
ティール組織とは?背景と定義
自律型組織の進化系
ティール組織とは、階層構造に依存せず、メンバー一人ひとりが自律的に判断し行動することを基本とする組織形態です。オランダの経営思想家フレデリック・ラルー氏によって提唱され、組織の進化の最終形として位置づけられています。
項目 | 内容 |
---|---|
提唱者 | フレデリック・ラルー |
組織形態 | 非階層型、自律分散型 |
基本思想 | 自己組織化、目的による統一、全人格性の尊重 |
適用領域 | IT、ベンチャー、NPO、創造的な業界で多く導入 |
ティール(青緑)は、組織の成熟度を示す色のひとつで、官僚型の「アンバー」、成果主義型の「オレンジ」、共感重視型の「グリーン」などと並ぶ中で、最も高度な段階とされています。
ティール組織の3つの特徴
1. セルフマネジメント(自己管理)
管理職や指示命令系統を排し、個々のメンバーが自ら判断して行動します。プロジェクト単位や目的別にチームを構成し、状況に応じて柔軟に役割を変えることができます。
内容項目 | 解説 |
---|---|
意思決定 | 権限をチームや個人に委ねる |
組織構造 | 上司・部下という関係が存在しない |
利点 | 主体性の向上、スピーディーな対応、ボトムアップ型の意思決定が可能 |
2. ホールネス(全体性)
従業員が職場で「ありのままの自分」を表現できる環境を整えることを重視します。感情や個性を抑え込まず、多様性を受け入れる文化が前提とされます。
内容項目 | 解説 |
---|---|
働き方 | 感情・個性を隠さずに働くことが奨励される |
環境 | 安心・安全な心理的スペースを重視 |
効果 | 心理的安全性による創造性や信頼感の向上 |
3. エボリューショナリーパーパス(進化する目的)
組織の目的が固定されたものではなく、外部環境や内なる声によって変化・進化していくことを前提とします。トップダウンでのビジョン設定ではなく、組織の内側から自然に生まれる方向性を重視します。
内容項目 | 解説 |
---|---|
目的の捉え方 | 社員全体で共有し、柔軟に見直しながら進化させる |
主体 | 経営層だけでなく、全メンバーで目的を追求 |
効果 | 意義を感じながら働くことができ、共感性の高い組織文化が育つ |
ティール組織を運営するためのポイント
1. 組織文化の醸成
ティール組織は制度だけでは成り立たず、信頼と共感をベースにした組織文化の構築が必要です。評価よりも対話、指示よりも共創を重視するマインドが求められます。
2. 情報のオープン化
あらゆる情報を共有し、意思決定の材料として全員がアクセス可能にすることで、分散型のマネジメントが機能します。透明性の高さが信頼の基盤となります。
3. 自己変革を受け入れる体制
目的や方向性が変化しても柔軟に受け入れる文化、失敗を成長の一部と捉える姿勢が必要です。心理的安全性が伴ってこそ、メンバーは挑戦と変化を選べます。
運営ポイント | 内容 |
---|---|
組織文化の強化 | 信頼と共創を軸にした風土づくり |
情報共有の徹底 | オープンなコミュニケーションと透明性ある経営 |
柔軟な制度運用 | 定型的なルールに縛られない柔軟な仕組み設計 |
ティール組織が向いている企業とは?
向いている条件
・階層にとらわれない柔軟な組織を目指す企業
・創造性が重視されるプロジェクト型業務を持つ企業
・個々の自主性や目的意識を大切にしたい企業
導入に向かない場合
・明確な指揮命令や管理が必須の業務が中心の企業
・短期的な成果が求められる状況下で、変革の余裕がない場合
項目 | 向いているケース | 向いていないケース |
---|---|---|
組織体制 | 自律分散型を目指すベンチャー・中小企業 | 縦割りや固定的な体制が不可欠な大企業・官公庁など |
業務内容 | 変化が多く柔軟な対応が求められる開発・企画・創造系 | 高度な手順管理が必要な製造ライン・安全管理業務など |
組織風土 | 多様性を尊重し、心理的安全性が確保された文化がある | 保守的でヒエラルキーが重視されている組織文化の中 |
まとめ
ティール組織は、個人の自律性と組織全体の進化を促進する、これからの時代に適した新しい組織モデルです。3つの特徴「自己管理」「全体性」「進化する目的」を活かしながら、柔軟かつ強固なチームづくりが求められます。ただし、制度面だけでなく文化的な土台づくりが不可欠です。自社にとって本当に必要な変革かを見極めながら、段階的な導入を進めることが成功への鍵となるでしょう。