企業が銀行から融資を受ける際、最も重視される書類のひとつが「決算書」です。決算書には経営状況が集約されており、銀行はそれを通じて企業の信用力や返済能力を判断します。しかし、具体的にどの部分が評価対象となるのかは意外と知られていません。この記事では、銀行が決算書で注目している主なポイントと、それぞれの意味についてわかりやすく解説します。
銀行が決算書を見る目的
銀行は融資を実行する前に、「この会社にお金を貸しても返済される見込みがあるか」を判断します。決算書はその根拠となる資料であり、財務の健全性、収益性、返済能力、経営姿勢などを総合的に評価します。
銀行が注目する決算書の主なチェックポイント
以下に、銀行が審査時に注目する決算書の代表的なポイントを一覧にまとめます。
チェック項目 | 見られる内容 |
---|---|
売上高 | 安定しているか、前年と比較して増減の理由が説明できるか |
営業利益・経常利益 | 本業でしっかり利益を出しているか |
利益剰余金 | 過去の利益が蓄積されているか、赤字の累積がないか |
自己資本比率 | 借金に依存しすぎていないか(財務体質の健全性) |
流動比率 | 返済能力があるか、短期資金繰りに問題がないか |
借入金の返済状況 | 元金・利息の返済が順調か、滞納がないか |
特別損失や異常な取引 | 一時的な損失や不自然な会計処理がないか |
これらの項目は、損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書の3つの資料を横断的に見ながら評価されます。
特に重視される3つの視点
銀行は以下の3つの視点から決算書を総合評価しています。
評価軸 | 意味 | 具体的に見るポイント |
---|---|---|
安定性 | 倒産リスクが低いか | 自己資本比率、流動比率、債務超過の有無 |
収益性 | 安定して利益を出しているか | 営業利益率、売上総利益率、経常利益の推移 |
返済能力 | 借入金の返済余力があるか | キャッシュフロー、償却前利益、借入金返済比率 |
これらは短期的な利益だけでなく、長期的な財務の健全性を重視した評価指標です。
銀行が嫌がる決算書の特徴
以下のような内容があると、融資審査でマイナス評価を受けることがあります。
内容 | 評価への影響 |
---|---|
毎期赤字 | 継続企業としての信頼性が疑われる |
過剰な借入金 | 借金依存体質と判断される可能性 |
現金残高が極端に少ない | 資金繰りに不安があると見なされる |
仮払金・仮受金の増加 | 資金の流れが不透明で管理不足と見られる |
税金滞納の記載 | 信用力の低下につながる可能性 |
銀行に良い印象を与えるための工夫
- 決算内容について説明できるように準備する
- 数値の根拠を明確にする(増減理由など)
- 仮払金や役員貸付金などを整理しておく
- 債務超過や赤字の改善計画を説明できるようにする
- 月次決算や予実管理を実施し、日常の経営管理能力を見せる
これらは数字以上に経営姿勢の信頼感を高める要素となります。
まとめ
銀行は決算書を通じて、企業の財務状態と将来の返済能力を総合的に判断しています。売上や利益の水準だけでなく、安定性や信頼性も含めた広い視野で見られているため、事前の準備や書類の整備が非常に重要です。単に数字を整えるだけでなく、説明力と経営姿勢を伴うことが、融資の可否を左右する大きな要因になります。銀行と信頼関係を築くためにも、決算書を「見られる資料」から「伝える資料」へと意識を変えていきましょう。