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決算賞与は節税対策になる?仕組みとメリット・デメリットを詳しく解説

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監修者
竹村 直浩
竹村 直浩

<経営管理のプロ・数多の組織経営>
会計事務所経験からキャリアをスタート。
約30年間にわたりデータベースマーケティング、起業のみらずBPO業務および新規事業の立案に従事。
現在は、自らが代表を務める会社の経営の傍ら、経営管理および新規事業立案等の業務委託を請け負う

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年度末に利益が残っている企業がよく検討する「決算賞与」。実はこの制度、従業員の士気向上だけでなく、法人税の節税対策としても有効に働きます。本記事では、決算賞与の仕組みから、節税効果を最大限に活かすための条件、そして実務上のメリット・デメリットまでをわかりやすく解説します。

決算賞与とは?その基本的な仕組み

決算賞与の定義

決算賞与とは、企業が通常の賞与(夏・冬)とは別に、事業年度末に臨時で支給する賞与のことを指します。通常、企業の業績が良好で利益が大きく出た年度に、従業員への還元と法人税対策の一環として支給が検討されます。

正式には「事業年度末における未払賞与」として会計処理され、一定の条件を満たすことで未払計上した分を経費として計上し、法人税の課税所得を抑えることができます。

決算賞与と通常の賞与の違い

通常の賞与は就業規則や給与規定に定められた定期的な支給ですが、決算賞与は「臨時」であり、支給の義務はありません。事業の収支や将来の見通しを踏まえて柔軟に決定されるため、企業の判断に委ねられます。

比較項目通常の賞与決算賞与
支給時期夏・冬など固定決算期(年度末)に任意で支給
計上の扱い支給時に費用計上条件付きで未払計上が可能
規定就業規則などに基づく義務企業判断で任意に設定可能
節税効果基本的に支給時に効果未払でも条件付きで経費算入可能
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決算賞与が節税対策になる理由

法人税の課税所得を圧縮できる

企業の利益が出た場合、法人税はその利益に対して課税されます。決算期直前に従業員に賞与を支給し、それを経費として計上すれば、利益が減少し、法人税の負担を軽減することができます。

たとえば、決算前に300万円の利益が出ており、200万円を決算賞与として計上すれば、課税対象利益は100万円まで圧縮できます。これにより、約20~30%の法人税が抑えられる可能性があります。

現金支出のタイミングを後にずらせる

未払計上が可能な決算賞与は、決算期末に経費として処理しつつも、実際の支払いは翌期に行えます。これにより、キャッシュフローを調整しつつ節税効果を得ることが可能となります。

ただし、この場合にも「一定の要件」を満たす必要があるため、形式だけの処理は認められません。

決算賞与を経費計上するための要件

法人税法では、決算賞与を未払計上して経費に算入するためには以下の条件をすべて満たす必要があります。

条件内容
1. 支給対象者と支給額を決定していること従業員ごとに賞与額を決定し、賞与台帳に記載されていること
2. 決算日までに支給決定書を作成していること取締役会議事録や社内決定書などの文書で賞与支給を決議していること
3. 決算日から1か月以内に支払うこと実際の支給は、決算終了から1か月以内で完了していなければならない

この3つの条件を満たさない場合、未払として経費計上した決算賞与は認められず、損金算入が否認される可能性があります。

決算賞与のメリット

1. 節税効果の即効性がある

利益が多く出た年度に即座に法人税負担を抑えることができるため、タイミングを選べば非常に効果的な節税手段になります。

2. 従業員のモチベーション向上につながる

利益を従業員に還元する姿勢は、従業員の信頼感や会社への帰属意識を高める効果があります。努力が報われる制度として社内評価にもつながります。

3. 現金支出の先送りが可能

計上は今期、支出は来期という構造を取ることで、キャッシュフローに余裕が生まれ、資金繰りの調整がしやすくなります。

決算賞与のデメリット・注意点

条件を満たさないと節税効果が得られない

特に「1か月以内に支払う」という条件を忘れる企業が多く、税務調査で否認される例もあります。実務的には、支給スケジュールの管理が重要になります。

従業員間の不公平感に注意

支給額の設定が曖昧だったり、支給対象者に偏りがある場合、不満や混乱の原因になります。客観的かつ合理的な基準に基づいた支給設計が求められます。

翌期の資金繰りを圧迫する可能性

賞与の支払いは、決算期をまたいだ翌月に行われるため、キャッシュフロー管理が甘いと資金繰りに支障を来す恐れがあります。

デメリット項目内容
節税条件の厳格性法定条件を1つでも欠くと経費扱いが認められない
社内トラブルのリスク配分に偏りがあると不公平感が生まれ、職場の士気が低下する可能性
資金負担のズレ翌月の支出増により、支払準備が整っていないと運転資金が圧迫される

決算賞与を上手に活用するためのポイント

  • 毎年、決算2か月前には賞与支給の可否を検討する
  • 対象者ごとの支給基準を明文化しておく
  • 税理士や顧問会計士と連携し、帳簿・議事録を正確に準備する
  • 支払日を「決算日から30日以内」に必ず設定する
  • 現金の準備を含めたキャッシュフロー予測を立てる
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まとめ

決算賞与は、業績好調時に法人税を抑えるための強力な節税ツールであり、従業員満足度を高める効果も併せ持つ施策です。ただし、税法上の要件を満たさなければ節税効果は得られず、誤った運用は税務リスクにつながります。

節税を目的とするだけでなく、従業員への誠意ある還元として、事前準備と透明性のある運用を心がけることが、企業の信頼と持続可能な経営につながります。