起業を考える際、「資金」や「ビジネスモデル」だけでなく、忘れてはならないのが「税金」の知識です。起業後に予期せぬ納税義務が発生し、資金繰りに苦しむことがないように、あらかじめ知識を持っておくことが重要です。本記事では、起業時に発生する主要な税金の種類と注意点をわかりやすく解説します。
起業時に発生する主な税金一覧
起業形態にかかわらず、以下のような税金が関係してきます。特に法人設立の場合は、設立直後から課税対象となるケースもあるため注意が必要です。
税金の種類 | 内容と概要 |
---|---|
登録免許税 | 法人設立時に法務局へ支払う税金。株式会社で最低15万円。 |
消費税 | 売上に応じて発生。課税事業者の場合、2期目から納税義務が生じる可能性あり。 |
所得税/法人税 | 利益に対して課税される。個人事業主は所得税、法人は法人税。 |
住民税(個人・法人) | 所得に応じて発生。法人の場合は「均等割」で赤字でも支払義務あり。 |
事業税 | 所得に応じて発生。個人・法人ともに対象だが、一定の控除がある。 |
固定資産税 | 土地・建物・設備などを所有している場合に課税される。 |
償却資産税 | 建物以外の設備・器具・備品などの固定資産が対象。法人・個人共に一定条件で課税。 |
起業時に必ず発生する税金
登録免許税(法人設立時)
法人設立時には、法務局で登記を行う際に登録免許税が発生します。株式会社であれば最低15万円、合同会社は6万円が基本です。
この税金は設立時のみ発生するものですが、会社設立の初期費用として準備しておく必要があります。
法人形態 | 登録免許税の最低額 |
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株式会社 | 15万円 |
合同会社 | 6万円 |
起業後に発生する税金
所得税(個人事業主)/法人税(法人)
利益が発生すると、その利益に対して所得税(個人)または法人税(法人)が課せられます。税率は所得の額によって異なります。
形態 | 税率の例 |
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個人事業主 | 5%~45%(累進課税) |
法人(中小企業) | 15%(800万円以下)、23.2%(超過部分) |
※控除制度や損益通算など、実質税率は調整されることもあります。
消費税
起業直後は「免税事業者」となり、原則として2期目までは消費税の納税義務は発生しません。ただし、設立1期目の資本金が1,000万円以上である場合や、特定要件を満たす場合は「即課税事業者」として消費税の納税義務が発生するため注意が必要です。
条件 | 消費税の扱い |
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資本金1,000万円未満(原則) | 1・2期目は免税 |
資本金1,000万円以上 | 初年度から課税対象 |
特定期間の売上が1,000万円超 | 翌期から課税対象 |
住民税(均等割)
法人であれば、赤字でも最低7万円程度の住民税が発生します。これは「均等割」と呼ばれ、利益の有無にかかわらず自治体に納税が必要です。
個人事業主も前年の所得に応じて翌年の住民税が課せられます。
事業税
事業所得が年間290万円を超えると、個人事業主でも事業税が発生します。法人も同様に利益に応じて課税され、都道府県が課税主体です。
控除後の所得に対して約3%~5%の税率が適用されます。
固定資産税・償却資産税
事業用不動産を所有している場合には固定資産税が課せられます。さらに、10万円以上の備品(パソコン、複合機、製造機械など)を所有していると、償却資産税の申告と納税義務が発生します。
これらは毎年1月1日時点で所有している資産に対して課され、申告期限は1月31日です。
起業時の税金に関する注意点
税務署や自治体への届出が必要
起業後には、以下のような各種届出が必要です。届出を怠ると、青色申告が認められなかったり、控除が受けられなかったりするため注意しましょう。
届出書名 | 提出先 | 提出期限 |
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開業届(個人) | 税務署 | 開業から1か月以内 |
青色申告承認申請書 | 税務署 | 開業から2か月以内 |
法人設立届出書(法人) | 税務署・都道府県・市町村 | 設立後1か月以内 |
給与支払事務所等の開設届出書 | 税務署 | 開業後すみやかに |
節税対策は早めに検討を
起業時は利益が出にくい時期ではありますが、売上が伸びたときの税金対策を考えておくことが重要です。青色申告制度や減価償却、経費の正確な管理などを早期に導入しておくことで、将来的な節税につながります。
顧問税理士との連携も視野に
税務知識が不足していると、不要な税負担や申告ミスにつながる可能性があります。顧問税理士と連携することで、必要な届出、節税方法、税金スケジュールなどを一括で管理でき、安心して本業に集中することができます。
まとめ
起業時には、設立前後から様々な税金が発生します。税金の種類や時期を理解しておかないと、想定外の納税によって資金繰りが悪化するリスクもあるため注意が必要です。
個人事業主・法人どちらの形態でも、早い段階から税務の準備を整えておくことで、安心して事業をスタートできます。しっかりと知識を備え、必要に応じて専門家と連携しながら、健全な経営の第一歩を踏み出しましょう。