法人を運営するうえで避けて通れない「決算業務」。多くの経営者が税理士に依頼していますが、コスト削減や業務理解のために「自分でやってみたい」と考える方も増えています。本記事では、法人決算を自分で行う際の具体的な手順と、注意すべきメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。
法人決算とは?
年に一度、会社の財務状況をまとめる業務
法人決算とは、会社の1年間の収支をまとめて、損益計算書や貸借対照表などの「決算書」を作成し、税務署や関係機関に報告する一連の作業です。会社が「いくら利益を出したか」「どれだけ資産や負債があるか」を明らかにし、法人税等の納税額を確定させる役割を持ちます。
法人決算の流れ
項目 | 内容 |
---|---|
1. 会計帳簿の整理 | 売上・経費・仕入などの記録を整理、記帳ミスがないか確認する |
2. 試算表の作成 | 決算前の段階で損益の大まかな数字を出す |
3. 決算整理仕訳 | 減価償却や棚卸、未払い費用など、決算時に必要な調整を行う |
4. 財務諸表の作成 | 損益計算書・貸借対照表・株主資本等変動計算書などを作成する |
5. 法人税の計算 | 税務調整を行い、法人税・住民税・事業税などの納税額を確定する |
6. 各種申告書の提出 | 税務署・都道府県・市区町村などに法定期限内に提出する |
決算書の正確さは税務署からの信頼や融資審査にも影響するため、慎重な作業が求められます。
法人決算を自分でやる方法
1. 会計ソフトを活用する
現代では「弥生会計」「freee」「マネーフォワードクラウド会計」など、初心者でも使いやすい会計ソフトが充実しています。これらのツールを使えば、日々の帳簿付けから決算処理まで一通りこなすことが可能です。
2. 税務署の公式サイトや書籍を参照する
国税庁のWebサイトでは、法人税の申告書の書き方や必要書類が詳しく掲載されています。また、「法人税の確定申告ガイド」などの参考書を使うのも効果的です。
3. 小規模法人の場合は負担が軽い
従業員が少ない、売上や取引が単純な法人であれば、決算処理も比較的シンプルです。事業主が会計や税務の知識をある程度持っていれば、外注せずに完結することも可能です。
自分で法人決算をやるメリット
メリット項目 | 内容 |
---|---|
コスト削減できる | 税理士報酬(年間10万円〜数十万円)を抑えることができる |
自社の数字に強くなる | 売上・利益・費用構造などを深く理解することで、経営判断の精度が上がる |
会計知識が身につく | 経理の基礎や税務の知識が自然と身につき、事業運営に活かせる |
データ管理が柔軟になる | 自分のペースで帳簿を見直したり、資料をカスタマイズできる |
特に創業初期やスモールビジネスでは、費用対効果を考えて自分で行う選択も現実的です。
自分で法人決算をやるデメリット
デメリット項目 | 内容 |
---|---|
時間がかかる | 慣れないうちは数十時間かかることもあり、本業への影響が出る可能性がある |
ミスのリスクがある | 計算ミスや申告漏れにより、税務調査や追徴課税のリスクが高まる |
複雑な処理に対応しにくい | 減価償却や税務調整など、専門的な処理が必要な場合は混乱しやすい |
節税の幅が狭くなる | 税理士のアドバイスが得られないため、法的に有利な節税策を逃す可能性がある |
特に赤字計上や資産計上など判断が分かれる処理については、専門知識がなければ対応が難しくなるケースもあります。
法人決算を自分で行う際の注意点
- 帳簿付けを毎月こまめに行う:まとめて処理すると漏れや間違いが発生しやすくなる
- 固定資産や減価償却の管理に注意する:耐用年数や償却率の確認が必要
- 税務申告書は早めに下書きする:提出期限ギリギリでは間に合わない場合がある
- 書類は7年間保管が義務:決算書、帳簿、請求書などは税法上の保存義務あり
- 申告期限に遅れるとペナルティがある:無申告加算税や延滞税が課せられる
自分でやるか、専門家に依頼するかの判断基準
判断ポイント | 自分でやるべき場合 | 税理士に依頼すべき場合 |
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会社規模 | 売上・取引数が少ない小規模法人 | 取引が多く、仕訳・処理が複雑 |
会計知識 | 会計の基礎を理解しており、ソフトの操作に慣れている | 会計・税務に自信がなく、知識が不足している |
節税対策 | シンプルな処理のみでよい | 多角的に節税を図りたい、複数の制度を活用したい |
業務時間 | 経理に時間をかける余裕がある | 本業に専念したく、事務作業を減らしたい |
まとめ
法人決算は法律上必須の手続きであり、自分で行うことも可能ですが、そのためには一定の知識と準備が求められます。コスト面のメリットは大きい一方で、ミスや申告遅延のリスクもあるため、自社の状況に応じた判断が大切です。
会計ソフトの進化により、初めての経営者でも取り組みやすくなっていますが、不安がある場合や複雑な処理が発生する場合は、無理せず専門家の力を借りるのも一つの手です。