日々の経費処理や確定申告に必要な「領収書」。集めるのは簡単でも、「いつまで保管すればいいのか」「どこにどうやって保管すべきか」といった点で悩む方も多いのではないでしょうか。本記事では、個人事業主・法人それぞれの保管期間と、領収書を適切に保存するための方法・注意点をわかりやすく解説します。
領収書の保管が必要な理由とは?
領収書は、事業に関する支出を証明するための重要な書類です。帳簿に記載した金額が正当であることを示す証拠として、税務調査時に提出を求められることがあります。
また、青色申告特別控除を受けるためには正確な帳簿付けとともに、関連書類の保管が義務付けられています。領収書を保管していないと、必要経費として認められないリスクもあるため、注意が必要です。
個人事業主と法人の保管期間の違い
対象 | 保管期間 | 根拠法令 | 備考 |
---|---|---|---|
個人事業主 | 7年間 | 所得税法・青色申告法 | 確定申告で青色申告を行っている場合 |
個人事業主 | 5年間 | 所得税法 | 白色申告(青色以外)の場合 |
法人 | 7年間 | 法人税法・会社法 | 決算書類、請求書・領収書も含む |
基本的には「7年間保管」しておくことが安全です。特に個人事業主であっても、税務調査は5年以内に行われることが一般的ですが、「重加算税」が発生するようなケースでは7年遡って調査されることもあるため、長めの保管が推奨されます。
保管期間の起算日はいつから?
領収書の保管期間は「確定申告の提出期限の翌日から起算」されます。たとえば、2023年分の確定申告は2024年3月15日が提出期限となるため、2024年3月16日から7年間の保管が必要です。
年度 | 確定申告期限 | 保管開始日 | 保管終了年(7年後) |
---|---|---|---|
2023年分 | 2024年3月15日 | 2024年3月16日 | 2031年3月15日 |
2024年分 | 2025年3月15日 | 2025年3月16日 | 2032年3月15日 |
正しい領収書の保管方法
紙の領収書の保管方法
- 仕分けファイルやクリアポケットに分類して保存
月別、取引先別、用途別などに仕分けておくことで後から見つけやすくなります。 - 湿気・日光を避けて保管
レシート紙(感熱紙)は時間とともに文字が消えるため、直射日光や湿気を避け、冷暗所に保管するのが理想です。 - 劣化防止のためにコピーを取る
大事な領収書は、スキャンやコピーで複製しておくと安心です。
電子保存にも対応
2022年1月の電子帳簿保存法改正により、スキャナ保存やデジタル領収書の保存も可能になりました。
方法 | 注意点 |
---|---|
スキャナ保存 | タイムスタンプ付与、改ざん防止処理が必要 |
デジタル領収書の保管 | 保存ソフトや会計システムの要件を満たしていることが前提 |
クラウド保存 | バックアップ体制、セキュリティ強化の確認が必須 |
電子データとして保存する場合でも、税務署からの調査に備えて、出力可能な状態であることが求められます。
領収書保管における注意点
- 保存漏れを防ぐため、すぐに保管する習慣をつける
後回しにすると紛失しやすくなり、経費計上の機会を失うこともあります。 - 私的な支出との混同に注意
個人事業主の場合、家計と事業経費が混ざりやすいため、明確に区別しましょう。 - 不正や二重計上のリスクに注意
同じ領収書を複数経費計上するなどの行為は、税務調査で重大な指摘につながることがあります。
領収書がなくても経費計上できるケースはある?
一定の条件を満たせば、領収書がない場合でも「出金伝票」や「メモ書き」で経費計上できることがあります。
ケース | 対応方法 |
---|---|
現金払いで領収書をもらえなかった | 出金伝票に日付・金額・用途を記録 |
電車やバスの交通費 | ICカード履歴・手書きの交通費明細で代用可能 |
自販機・出張時の飲食費など | レシート代わりの記録メモを作成して証拠化 |
ただし、領収書より信頼性が劣るため、税務署に否認される可能性もある点に留意してください。
まとめ
領収書は、個人事業主・法人ともに最大7年間の保管が必要であり、経費計上や税務調査への対応において重要な役割を果たします。紙のまま保管する場合は分類と劣化対策を、電子保存を活用する場合は法令への準拠とバックアップを意識することが大切です。
日々の小さな経費であっても、正確に保管・管理しておくことで、申告時の手間やリスクを大幅に軽減できます。これを機に、領収書の保管ルールを見直してみてはいかがでしょうか。