株式や仮想通貨、不動産などへの投資で収入を得ている個人投資家が「起業」を考えるケースが増えています。個人投資家は法人を設立することで、税制面のメリットや資産運用の幅を広げることができます。本記事では、個人投資家が起業できるのか、その具体的な方法とメリット・デメリットについて詳しく解説します。
個人投資家は起業できるのか
結論として、個人投資家でも起業は可能です。日本の法律では、個人が法人を設立することに制限はなく、安定した収入がある投資家であれば、法人を設立してビジネスを拡大することができます。
ただし、投資活動だけでは「事業性」が認められにくいため、法人として設立する場合には次のような要素があると望ましいとされています。
- 他人資金の運用(ファンド形式)
- 投資に関連する教育・コンサルティング事業
- 取引を反復継続して行っている
- 投資関連の情報発信・セミナーなどをビジネス化している
「投資を仕事にしている=起業家」ではなく、継続性と収益性がある活動を行っているかどうかが、起業として成立するポイントになります。
個人投資家が起業するメリット
起業によって得られる最大のメリットは、法人化による税制上の恩恵や、社会的な信用力の向上です。以下の表に、個人投資家が法人を設立することで得られる主なメリットをまとめました。
項目 | 内容 |
---|---|
税制の最適化 | 所得税(最大45%)に比べて、法人税(約15〜23%)は低く抑えられる |
経費の拡大 | 法人では経費として認められる範囲が広く、節税効果が見込める |
信用力の向上 | 法人化により、取引先や金融機関からの信用が高まりやすい |
節税スキームの活用 | 役員報酬・退職金・法人名義の車や家賃など、税法に基づく節税策が取りやすくなる |
相続対策 | 法人に資産を保有させることで、相続時の評価額圧縮が可能になる |
特に一定以上の収益がある個人投資家にとっては、法人化のインパクトは非常に大きく、実質手取りを増やすことができるのです。
起業にあたってのデメリットとリスク
一方で、法人を設立することにはリスクや負担も存在します。以下の点には注意が必要です。
設立・維持にコストがかかる
法人設立時には登記費用や定款認証費用が発生し、設立後も毎年法人住民税(均等割)などがかかります。
事務作業・会計処理の手間
法人になると帳簿の保存義務が生じ、会計や税務申告も複雑になります。専門家(税理士)への依頼が必要になるケースがほとんどです。
投資に特化した法人の設立にはハードルがある
純粋な投資活動のみを目的とした法人は、税務署から「事業性がない」と判断される場合があり、経費の否認や青色申告が認められない可能性もあります。
デメリット項目 | 内容 |
---|---|
設立コスト | 約20万円程度(株式会社の場合) |
年間維持費 | 税理士報酬、住民税、会計ソフト等で10万円以上かかることも |
手続きの煩雑さ | 登記、税務署への届け出、決算報告など多くの作業が発生 |
節税が難しい場合も | 利益が少ないと、かえってコストがかさみ逆効果になることがある |
個人投資家が起業する際におすすめの会社形態
起業する際の会社形態としては、合同会社または株式会社のどちらかが一般的です。それぞれの特徴を表にまとめました。
会社形態 | 特徴 | 向いている人 |
---|---|---|
株式会社 | 社会的信用が高く、出資者と経営者を分けられる | 他人資本を入れる予定がある場合 |
合同会社 | 設立費用が安く、運営も柔軟。意思決定がスピーディー | 少人数で自己資金で始める場合 |
初めての起業であれば、コストを抑えられる合同会社を選択するのも一つの手段です。事業が拡大すれば、後から株式会社へ移行することも可能です。
投資と起業を両立させるためのポイント
個人投資家が起業を成功させるには、以下のような工夫と準備が重要です。
- 収益性のあるサービスや商品を持つ
- 投資をベースにした教育・情報発信をビジネス化する
- 法人と個人の資産・口座を明確に分ける
- 節税や決算に強い専門家と契約する
- 法人化後の事業計画書をしっかり作成する
「投資の延長線上で法人をつくる」のではなく、法人として何を事業とし、どのように利益を生むかを明確にすることが、成功への鍵です。
まとめ
個人投資家でも、十分に起業は可能です。特に安定した収益がある場合には、法人化によって税制面の恩恵を受けられるだけでなく、社会的信用や事業拡大のチャンスも広がります。
ただし、法人には費用や手続き面での負担があるため、起業前にはしっかりと準備し、目的に合った形で会社を設立することが重要です。自身の投資スタイルと今後のビジョンを明確にした上で、起業を選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。