退職時に必要となる書類の一つに「離職票」があります。特に失業給付(失業保険)の申請に欠かせないこの書類ですが、実際にはその発行手続きや種類、取り扱いに不安を感じる人も多いのではないでしょうか。この記事では、離職票の概要から発行のための流れ、注意すべきポイントまでを詳しく解説します。人事担当者・経営者だけでなく、退職を控える従業員の方も必見の内容です。
離職票とは?基本的な役割と仕組み
離職票とは、退職者がハローワークに提出することで、失業給付(基本手当)を受ける際に必要となる公的書類です。正式名称は「雇用保険被保険者離職票」であり、厚生労働省所管の雇用保険制度に関連する書類のひとつです。
この書類は、「退職の事実」「離職理由」「退職前の賃金状況」などを記載しており、失業給付を正確に計算するための基礎資料となります。
離職票には2種類ある?それぞれの違いを理解しよう
離職票には「離職票-1」「離職票-2」の2種類があります。それぞれ役割が異なるため、以下のように整理できます。
書類名 | 内容と目的 |
---|---|
離職票-1 | 退職者の基本情報や雇用保険番号、退職日などを記載 |
離職票-2 | 賃金の支払状況や退職理由、離職前の勤務実績などを記載 |
この2枚がセットで揃っていないと、原則として失業給付の手続きが完了できません。発行元は雇用保険事務を扱う「会社側」であり、事業主が手続きを進める必要があります。
離職票の発行条件と対象者とは?
すべての退職者に離職票が交付されるわけではありません。次のような条件に該当する場合に、原則として発行されます。
雇用保険に加入していた者
離職票の発行対象となるのは、雇用保険に加入していた従業員です。パートやアルバイトであっても、一定の労働時間(週20時間以上)と勤務期間があれば対象となります。
退職後、失業給付を希望する者
自己都合・会社都合を問わず、退職者がハローワークで失業給付の手続きを行いたい場合に、離職票が必要です。退職者本人の希望がない限り、発行は義務ではありません。
離職票発行までの手続きの流れ
離職票の発行には以下のような手順が必要です。
- 退職日を確定し、事業主が離職証明を作成
- 事業主がハローワークに「資格喪失届」とともに提出
- ハローワークが内容を確認し、離職票を交付
- 事業主が退職者に離職票を送付
通常、退職から離職票の交付までは「おおよそ10日〜2週間程度」が目安とされています。ただし、退職理由や記載内容に不備があると、確認に時間がかかる場合もあります。
離職票の発行に関する注意点
本人の同意が必要な場合がある
退職者が「離職票の交付を希望しない」と明言している場合、企業側が勝手に手続きを進めることは避けるべきです。事前に確認し、意思を尊重しましょう。
離職理由の記載に注意
「自己都合退職」「会社都合退職」など、離職理由の内容によって、給付開始時期や金額に差が出ます。トラブルを避けるためにも、会社・本人の双方が合意のうえで正しく記載することが大切です。
書類の控えを残す
提出前に、企業として控えを保管しておくことは基本です。後日トラブルが発生した場合の証拠として役立ちます。
退職者が離職票を受け取るまでにすべきこと
退職時に会社へ依頼する
自動的に発行されない場合もあるため、退職時に人事担当へ「離職票を希望する」旨を伝えておくことが重要です。
転送先住所を確認
退職後に引越しを予定している場合などは、離職票の送付先を正しく会社に伝えておきましょう。書類の不着は再発行の手間となります。
離職票が届かないときの対処法
退職後2週間以上経過しても離職票が届かない場合、以下のように対応しましょう。
- 会社に状況確認を依頼する
- 雇用保険の資格喪失手続きが済んでいるか確認する
- それでも解決しない場合はハローワークに相談
企業側の対応が不十分な場合、ハローワークが仲介することでスムーズに進むこともあります。
まとめ
離職票は、退職者が失業給付を受けるために欠かせない重要書類です。そのため、会社側の正確かつ迅速な対応が求められます。
- 離職票には「離職票-1」と「離職票-2」がある
- 雇用保険加入者が対象
- 退職者の意思確認と正確な離職理由の記載が重要
- 発行には約2週間かかる
- トラブルを防ぐためには、会社・退職者双方の情報共有が大切
人事・労務担当者はもちろん、退職予定の従業員も制度の内容を正しく理解しておくことで、スムーズな転職活動や失業給付の受給につながります。