妊娠や出産を理由とした職場での嫌がらせ、「マタニティハラスメント(マタハラ)」は、近年法的にも厳しく取り締まられるようになってきました。特に2025年以降、関連法の強化が予定されており、企業には一層の対応が求められます。では、どのような言動がマタハラに該当するのでしょうか?本記事では、具体的な例とともに、企業・従業員が知っておくべきポイントを解説します。
マタハラとは?
妊娠・出産・育児に関する差別的な言動や扱い
マタハラとは、妊娠・出産・育児を理由に、女性労働者が職場で受ける不当な扱いや嫌がらせを指します。身体的なハラスメントに限らず、言葉や態度、配置転換といった職場環境の変化も対象となる場合があります。
分類 | 具体的な内容 |
---|---|
直接的マタハラ | 「迷惑だから辞めてほしい」「妊娠は自己責任」などの発言 |
間接的マタハラ | 昇進機会の制限、評価の不公平、配置転換など |
制度的不利益 | 育休取得後の復職妨害、育児時短勤務への圧力など |
妊娠や出産は労働者の当然の権利であり、それを理由にした差別や制限は、法的に厳しく処罰される可能性があります。
マタハラに該当する具体的な言動
日常会話の中にも潜む「無自覚な差別」
以下のような発言や行動は、意図がなくてもマタハラとみなされる可能性があります。
- 「また妊娠したの?計画性がないね」
- 「子どもがいる人は責任ある仕事は無理だよ」
- 「育休なんて取られたら迷惑」
- 「辞めてくれた方が助かる」
- 「時短勤務は他の社員に負担がかかる」
- 産休中の人を「戦力外」として扱う発言や態度
このような言動は、本人にとっては何気ないつもりでも、受け手には強いプレッシャーや不快感を与えます。
マタハラが企業にもたらすリスク
信用失墜、訴訟、採用難につながる危険性
マタハラが発覚すると、企業はさまざまな形で大きなダメージを受けます。
リスク項目 | 内容 |
---|---|
訴訟・労基署対応 | 不当労働行為として訴えられるケースもある |
離職・人材流出 | 優秀な社員が定着しない |
企業イメージの悪化 | SNS等での拡散により炎上・ブランド毀損につながる |
採用への影響 | 「働きづらい職場」として敬遠される |
労働基準監督署の指導 | 是正命令や改善報告の提出を求められる場合あり |
「知らなかった」「冗談だった」では済まされない時代になっているため、全社的な取り組みが求められます。
マタハラ防止のために企業が取るべき対策
「無意識」を「ルール」に変える取り組みを
マタハラを防ぐためには、予防的な取り組みと、万が一の際の対応体制の両方が重要です。
対策項目 | 解説 |
---|---|
ハラスメント研修の実施 | 全社員に妊娠・育児への理解を深める教育を行う |
社内ルールの明文化 | マタハラ禁止を就業規則に明記する |
管理職の意識改革 | 特に現場の上司には対応力と知識を持たせる |
相談窓口の設置 | 社内外の通報体制を整備し、安心して相談できる環境づくり |
育休後復職支援 | 柔軟な働き方の制度化と実践的支援の整備 |
「言ってはいけない言葉」を避けるだけでなく、「どう支えるか」の視点を持つことが、信頼される企業づくりにつながります。
改正法のポイントと今後の動向
「ハラスメント防止義務」がより明確に
2025年の改正法では、企業のマタハラ防止義務がより強化される予定です。主な変更点は以下の通りです。
- すべての企業に対してハラスメント防止の措置義務が明記
- 被害者への配慮義務が強化される
- 再発防止に向けた「継続的教育」が必要に
従来は努力義務にとどまっていた内容も、法的義務として明文化される方向に進んでおり、対応を怠った企業への制裁も強まる見通しです。
まとめ
マタハラは、法令違反だけでなく、職場の信頼関係や組織の健全性を大きく損なう行為です。特に今後、法改正により企業の責任が一層重くなる中で、あらゆる従業員が「無意識の差別」を防ぐための知識と配慮を身につけることが求められます。
妊娠・出産・育児は誰にでも関わりうる人生の一部です。だからこそ、職場全体で「お互いを支え合う文化」を育て、マタハラのない安心できる職場づくりを目指しましょう。