事業が軌道に乗っているか、銀行から融資を受けるときには決算書が一つの“勝負資料”になります。銀行が提出された決算書をどのように読み、どのような項目を重視して評価しているかを理解しておくことは、資金調達や経営の安定化にとって大きな強みになります。本記事では、銀行が重視するチェックポイントを整理し、どういった決算書なら評価が高まるかを解説します。
銀行が決算書を見る目的と基本的な着眼点
銀行が決算書で知りたい「返済力」「継続性」「信用力」
銀行が決算書をチェックする最大の目的は、融資申請企業が「貸したお金をきちんと返せるか」「事業を継続できるか」という点です。決算書には、売上・利益・資産・負債・キャッシュフローなど企業の経営状況が集約されており、それらを通して次のような視点で評価が行われます。
- 安定性 →自己資本比率の高さ、債務超過の有無、過去の利益の蓄積状況
- 収益性 →営業利益・経常利益の実績、継続して利益を出せているか
- 返済能力 →キャッシュフローの状況、借入金の返済比率や債務償還年数
銀行はこれらを総合的に勘案して「この会社なら返済できそうだ」「リスクが低そうだ」と判断します。
銀行が重視する具体的な数値・指標とは
売上の推移から負債の状況、資金繰りまで見られている
銀行が決算書を読み込むうえで、特にチェックされる代表的な項目を以下に示します。
指標 | 見られているポイント | 重要性の理由 |
---|---|---|
売上高・利益(営業利益/経常利益) | 連続して利益が出ているか、前年と比べて変化に合理性があるか | 本業で稼げていないと返済能力に疑問が生じるため |
自己資本比率・純資産 | 借入金に頼りすぎていないか、財務構造が健全か | 借入依存度が高いと返済リスクが高くなるため |
流動比率・売掛金回転期間 | 短期の資金繰りが滞っていないか、回収が長期化していないか | 資金が滞ると“黒字倒産”につながるため |
債務償還年数・借入金の返済状況 | 借入金を何年で返せそうか、返済の余力があるか | 返済の見通しが立たないと融資リスクが高まるため |
また、売上が急減していたり在庫や売掛金が過度に増えていたりする場合には、その理由を銀行から必ず質問されることになります。
銀行が嫌がる決算書の特徴とその背景
数字だけ整えても信用されないケースがある
優良な決算書とは、単に黒字であるというだけではなく、実態と整合性のある数字が並んでいるものです。銀行が警戒する特徴として、以下のようなものがあります。
- 過去数期にわたって赤字が続いている
- 自己資本比率が極端に低く、借入金比率が非常に高い
- 現金残高が売上規模に比して少なすぎる、または多すぎる(不自然)
- 売掛金や棚卸資産が急増し、回転日数が長期化している
これらの問題がある場合、銀行は融資実行後の回収に不安を抱え、審査が厳しくなるか、融資そのものを見送る可能性もあります。
銀行に良い印象を与えるための決算書の整え方
事前準備と説明力が審査のカギになる
銀行から好印象を得る決算書にするためには、以下のようなポイントを抑えておくと有利です。
- 決算書の各数値の増減理由を説明できるようにしておく
- 売上や利益が前年から変わった場合は、原因を整理し、現実的な改善策を示せるようにする
- 売掛金や棚卸資産の増加についても、受注増/在庫積増しなど合理的な理由を整理しておく
- 月次決算や予実管理を普段から行い、数値の変動に敏感な体制を整えておく
- 税理士任せにせず、経営者自身が決算書の内容を把握し、説明できる状態にする
- 融資申請時に「日常から数値を把握し、経営管理を行っています」という姿勢を示すことが信頼につながる
まとめ
銀行が決算書をチェックする際には、売上や利益だけでなく、財務構造の健全性、資金繰りの安定性、返済余力といった広い視点で企業を評価しています。ですから、説明のつかない数値の変動や不自然な資産・負債の動きがあると、審査で不利になる可能性があります。
資金調達をスムーズに進めるためには、決算書を“ただ提出する書類”として扱うのではなく、“銀行との対話のための資料”として整理・説明できるように備えることが重要です。決算書を自社の経営改善と資金調達の両方に活かしていきましょう。