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赤字を理由に役員報酬を減額できる?適切なタイミングと注意点を解説

お役立ち情報
監修者
竹村 直浩
竹村 直浩

<経営管理のプロ・数多の組織経営>
会計事務所経験からキャリアをスタート。
約30年間にわたりデータベースマーケティング、起業のみらずBPO業務および新規事業の立案に従事。
現在は、自らが代表を務める会社の経営の傍ら、経営管理および新規事業立案等の業務委託を請け負う

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企業が赤字に陥った場合、まず見直しの対象となるのが役員報酬です。しかし、役員報酬は経費として損金算入されるため、ただ単に減額すればよいというわけではなく、税務上のルールやタイミングに注意が必要です。本記事では、赤字時における役員報酬の減額の可否、変更可能なタイミング、実務上のポイントについて詳しく解説します。

役員報酬とは何か?

損金算入と税務上の扱い

役員報酬とは、取締役などの役員に支払われる給与のことを指します。役員報酬は、法人税の計算において損金(会社の経費)に算入される条件が厳しく定められており、以下の3つのいずれかの形で支払う必要があります。

支払い形態損金算入の可否主な内容
定期同額給与毎月同じ金額で支給する形式
事前確定届出給与あらかじめ税務署へ届け出た通りの金額を支給
利益連動給与△(上場企業等に限定)業績に応じて変動する報酬

このうち、中小企業で最も一般的なのは「定期同額給与」であり、報酬額の変更には一定の制約が伴います。


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赤字でも役員報酬は減額できるのか?

減額は可能だが制限がある

結論として、赤字であっても役員報酬の減額は可能です。ただし、税務上の取り扱いを誤ると、減額後の報酬が損金として認められないリスクがあります。

定期同額給与の場合、年度の途中での変更は原則不可です。ただし、以下のような「やむを得ない事由」が認められる場合には、減額後の報酬も損金算入されることがあります。

  • 業績が著しく悪化した場合
  • 災害や予期しない事業環境の変化があった場合
  • 金融機関との融資契約で報酬減額が条件とされた場合

つまり、赤字という理由だけではなく、「赤字に至るまでの具体的事情」が明確である必要があります。


役員報酬を変更できるタイミング

原則は事業年度開始後3カ月以内

役員報酬を変更して損金算入を継続するには、変更のタイミングが極めて重要です。以下のようなスケジュールが基本となります。

  • 毎年の定時株主総会で新たな報酬額を決定
  • 事業年度開始日から3カ月以内に変更を行うこと

この期間内であれば、「定期同額給与」として新たな金額を設定することができ、税務上も損金算入が認められます。

一方で、3カ月を超えてからの変更や、事前届出のない不規則な減額は、損金扱いされず課税対象となる可能性があるため注意が必要です。


減額する際の実務上の注意点

社内と税務署の両方で整合性を取ることが重要

役員報酬を減額する際には、以下のような実務対応が求められます。

  • 減額理由を文書化し、社内稟議や議事録に明記する
  • 定時株主総会や取締役会で正式な決議を行う
  • 減額理由が「やむを得ない」と認められる内容であること
  • 税務調査時に説明できるよう根拠資料を保存する

一時的な判断で報酬を減額するのではなく、財務状態と経営方針を整理した上で、明確な意思決定を行う必要があります。


減額による企業側のメリットとデメリット

一時的な資金繰り対策と信頼性の維持

赤字時に役員報酬を減額することは、経営再建の意思を示す有効な手段となり得ます。具体的な効果は次の通りです。

【メリット】

  • 経費削減により資金繰りが改善される
  • 金融機関や取引先に対し経営改善の姿勢を示せる
  • 社員との連帯感を保てる

【デメリット】

  • 変更時期や方法を誤ると税務上の損失が生じる
  • 長期的に減額を続けると経営者の生活に影響
  • 減額理由が曖昧だと、株主や従業員から不信感を持たれる可能性

このように、単なるコスト削減ではなく、組織の信頼維持や再建戦略の一環として実施することが大切です。


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まとめ

赤字を理由に役員報酬を減額することは可能ですが、そのためには「やむを得ない事情」と「適切なタイミング」が重要です。税務上の取り扱いを誤ると、かえって課税対象となるリスクがあるため、慎重な対応が求められます。

減額を実施する際は、社内決議の整備と文書化、そして税務対応への理解が不可欠です。経営改善の一環として適切に役員報酬を見直し、企業の健全な再建を図っていきましょう。