個人事業主として家族に手伝ってもらうことは多くありますが、「家族に支払う給与を経費にできるかどうか」が気になる方も多いのではないでしょうか。実は、条件を満たせば家族への給与も必要経費として認められる場合があります。この記事では、家族給与を経費計上するための要件や手続き、注意点をわかりやすく解説します。
家族給与を経費として計上する基準
原則と例外の関係
通常、家族に給与を支払った場合でも、自動的に経費として認められるわけではありません。特に「生計を一にしている家族」に対しては、給与を必要経費にできないのが原則です。一方、「生計を一にしていない家族」や、所定の制度(青色申告制度)を利用した場合には、経費扱いが認められる可能性があります。
つまり「誰に」「どのような形で」給与を支払うかによって、経費として認められるかどうかが大きく変わるという点に留意してください。
経費と控除の違い
| 対象家族の状況 | 経費計上の可否 |
|---|---|
| 生計を一にしない家族 | 経費として計上できる可能性が高い |
| 生計を一にする家族(通常) | 原則として経費にできない |
| ※ただし、生計を一にする家族でも「青色事業専従者給与」の要件を満たせば経費計上可 |
このように、家族給与の取り扱いには「生計を一にしているかどうか」や「申告制度の種類」がポイントとなります。
経費算入のための主な要件
対象家族や制度を正しく理解する
- 生計を一にしない家族:家族であっても、生活費を別途管理しており、独立した生計を維持している場合、一般の従業員と同様に給与を必要経費として処理できる可能性があります。
- 生計を一にする家族:配偶者や子どもなど、同じ家計で生活している家族の場合、給与を経費にするためには「青色申告者である」「専ら事業に従事している」などの追加条件を満たす必要があります。
適正な給与額と勤務実態の記録
給与を家族に支払う際には、以下の点も重要です。
- 給与額が業務内容・地域・他従業員の給与水準に照らして常識的な範囲であること
- 家族が実際に業務に従事している実態を記録(出勤簿、業務内容、日報など)
- 青色申告制度を利用する場合には「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出や、給与支給方法・金額を明記した規定の整備
このような準備を怠ると、税務調査で「家族への給与=単なる所得分散」とみなされ、経費として認められないリスクがあります。
家族給与を活用するメリットと注意点
メリット
- 所得を圧縮できる可能性があるため、所得税・住民税の軽減につながる
- 家族が事業に関わることで、業務負担を分散できる
注意点
- 配偶者控除や扶養控除を受けられなくなる場合がある
- 給与水準が極端に高い、または勤務実態がないと、経費として否認される可能性あり
実務で押さえておきたいポイント
- 給与支払日・金額・業務内容・勤務時間などを帳簿・資料に記録しておくこと
- 年度途中で給与金額を変更する場合には届出が必要な制度もあるため、申請期限や手続きに注意
- 経費処理を前提に家族給与を支払う際には、他の控除との兼ね合い(配偶者控除・扶養控除)を検討する
まとめ
個人事業主が家族に支払う給与も、一定の条件を満たせば必要経費に計上できる可能性があります。「生計を一にしていない家族」への給与や、「生計を一にする家族」への給与であっても「青色事業専従者給与制度」を活用すれば経費扱いが可能です。しかし、勤務実態・給与水準・手続きが整っていないと否認されるリスクもあります。経費として処理を検討する際には、制度の概要を理解し、資料の整備・適正な給与水準の設定を丁寧に進めていきましょう。必要ならば、税理士など専門家への相談もおすすめです。

