法人で事業を営んでいた経営者が、再び個人事業主に戻る「個人成り」が注目されています。法人維持が難しくなった場合や働き方を見直したい場合など、選択肢として検討されることが増えている方法です。今回は、個人成りの意味・メリット・デメリット・そして具体的な手続きの流れについてわかりやすく整理します。
個人成りとは何か
「個人成り」とは、法人格を維持して事業を行っていた法人を解散あるいは休眠状態にして、自身が個人として事業を再開することを指します。法人設立(法人成り)とは逆のステップにあたります。
具体的には、法人で使用していた設備や顧客・取引関係を整理し、個人事業主として開業届を出すなどの手続きが必要になります。法人から個人に戻る理由は、利益が減少した、維持コストが重くなった、働き方を簡素化したいなど多様です。
個人成りにおけるメリット/デメリット
個人成りを検討する際には、メリットとデメリットを正しく理解することが重要です。以下の表に主な内容を整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メリット | 法人維持に伴う社会保険料や法人住民税の負担が下がる可能性がある。申告手続きや会計処理が簡素化される。 |
| デメリット | 法人時代の赤字を個人に引き継げない。法人格の信用力を失う可能性があり、取引先・金融機関対応に影響が出る可能性あり。 |
また、以下のような具体的な点に留意してください。
- 法人を解散・清算するには登記・公告・清算手続きなどの手間とコストがかかる
- 個人事業主になると、負債は無限責任となることもあり、法人時代の有限責任とは異なるリスク構造となる
このように、メリットだけでなくデメリットや手続き上の負担を理解したうえで、個人成りの適否を慎重に判断することが大切です。
個人成りに必要な手続きの流れ
個人成りを行うためには、主に「法人側の終了手続き」と「個人事業としての開業手続き」の2段階を踏む必要があります。以下が主な流れです。
- 法人の解散・清算/休眠
- 株主総会による解散決議、清算人の選任、登記の実施
- 債権・債務・資産の整理、税務署・都道府県市町村への届出
- 個人事業主としての開業届出
- 税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」の提出
- 青色申告を希望する場合は「青色申告承認申請書」を併せて提出
こうした手続きを進める際には、取引先との契約関係の確認・設備や名義の移行・社会保険の変更など、実務的な項目も同時に整理しておく必要があります。
個人成りをスムーズに進めるためのポイント
個人成りを検討・実施する上で、次のようなポイントを押さえることでトラブルを減らし、移行をスムーズに進めることができます。
- 法人の負債や債務関係をしっかり整理し、清算の完了を確認する
- 取引先・金融機関・従業員(いる場合)など関係者への説明を丁寧に行う
- 個人事業としての収益見通しや税務・社会保険の負担をあらかじめシミュレーションする
これらを実行することで、法人から個人への移行において「負担だけが残る」状況を回避できます。
まとめ
個人成りは、法人化した事業を見直して経営体制をシンプルにしたいと考える経営者にとって、有効な選択肢の一つです。しかし、法人解散手続き・税務処理・責任構造の変化など、対応すべき課題も少なくありません。
まずは自社の財務状況・事業規模・取引先の関係性・将来の展望を踏まえたうえで、個人成りのメリット・デメリットを比較検討してください。そして、移行を円滑に進めるために、手続きの流れと実務的ポイントを早めに整理しておくことが成功の鍵となります。


