現代の企業では業務のデジタル化や効率化が進み、さまざまなクラウドサービスが利用されています。その中でも、ServiceNowとSalesforceはよく比較される代表的なプラットフォームです。しかし、その役割や機能は大きく異なります。この記事では、ServiceNowの概要と特徴、そしてなぜSalesforceと比較されるのかを整理しながら、それぞれの強みを見ていきます。
ServiceNowとは何か
基本的な役割と機能
ServiceNowは主に社内業務やITサービス管理(ITSM)、ワークフロー自動化、カスタマーサービス管理などを支援するクラウドプラットフォームです。企業のIT運用、人事、サポート、フィールドサービスなど、多様な部門の業務プロセスを一元管理できるのが大きな特徴です。
たとえば、ヘルプデスク対応、社内申請のフロー管理、ITインシデント管理、従業員サポートなどを効率化でき、部門間の垣根を越えた横断的な管理に強みを持ちます。
加えて、最近ではカスタマーサービス管理(CSM)や注文管理(SOM)などの機能も拡充され、従来のIT管理だけではなく「幅広い業務支援プラットフォーム」として進化しています。
Salesforceとはどんなサービスか
Salesforceは、顧客管理(CRM)および営業支援(SFA)を中心としたクラウドサービスです。顧客情報、商談履歴、マーケティング、カスタマーサポートなど顧客との接点を管理・分析し、営業活動や顧客対応を効率化・最適化することを主な目的としています。
特に営業チームにとっては、リード管理、商談ステータス管理、見込み顧客の追跡、販売予測などが得意分野です。また、マーケティングオートメーションや顧客サポート機能なども備え、顧客との関係構築を包括的に支えるプラットフォームとなっています。
ServiceNow と Salesforce の主な違い
下表に、両サービスの特徴と向いている用途を整理しました。
| 項目 | ServiceNow | Salesforce |
|---|---|---|
| 主な用途 | 社内業務管理/ITサービス管理/ワークフローの自動化 | 顧客管理/営業支援/マーケティング/CRM |
| 主な対象 | IT部門、人事、サポート、バックオフィスなど | 営業部門、マーケティング部門、カスタマーサポート |
| 得意なこと | 業務プロセスの統合管理、部門横断ワークフロー、IT運用管理 | 顧客データ管理、商談管理、営業プロセス、マーケティング連携 |
| 適した企業の状況 | 内部業務の効率化/複数部門の連携が必要/IT運用やサポート多め | 顧客との接点強化/営業や販売拡大/マーケティング重視 |
なぜ両者が比較されるのか
近年、ServiceNowは従来のITSM用途だけでなく、カスタマーサービス管理や注文管理など「顧客に関わる業務」への拡張を進めています。これにより、従来CRM領域で強みを持っていたSalesforceと重なる機能が増えたため、両者の比較が意識されるようになっています。
加えて、多くの企業が「社内業務と顧客対応の両面」を効率化したいと考えるため、どちらが自社の目的に合っているかを判断する必要が出てきています。
どちらを選ぶべきか?使い分けの目安
どちらのサービスを導入すべきかは、企業の課題や目的によって変わります。以下のようなケースが目安になります。
- 社内業務を効率化し、IT運用やワークフローを自動化したい → ServiceNow
- 営業力を強化し、顧客管理や販売拡大、マーケティングを重視 → Salesforce
- 内部業務と顧客向けサービスの両方を整えたい → 両者を併用/連携検討
特に大企業や部門が多岐にわたる組織では、ServiceNowでバックオフィスやIT運用を整えつつ、Salesforceで顧客対応を専門化するという使い分けが有効です。
導入時の注意点と考慮すべきポイント
どちらのサービスも万能ではなく、導入時には自社の業務内容や目的を整理することが不可欠です。以下の点に注意しましょう。
- 実際に「何を解決したいか」を明確にする
- 部門ごとに必要な機能と利用目的を整理する
- 両者の機能が重複する場合はどちらを優先するか判断する
- 運用ルールや管理体制を整えて、定着を図る
導入コストや運用コスト、社内の体制も含めた総合的な判断が重要です。
まとめ
ServiceNowとSalesforceは、どちらもクラウドベースの業務支援ツールですが、その目的や得意分野は大きく異なります。
ServiceNowは社内業務やIT運用、ワークフローの自動化など「社内の流れ」を効率化するのに適しており、組織のバックオフィスやサポート体制を整えるのに強みがあります。一方で、Salesforceは顧客との関係構築、営業・マーケティング・サポートを通じた売上や顧客満足度の向上に適しています。
どちらが優れているかというより、自社の目的や業務内容に応じて使い分けることが重要です。適切に選定・導入することで、業務効率化や顧客対応の質の向上など、組織全体の強みを高めることにつながります。


