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有限会社から株式会社へ移行するメリットは?

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監修者
竹村 直浩
竹村 直浩

<経営管理のプロ・数多の組織経営>
会計事務所経験からキャリアをスタート。
約30年間にわたりデータベースマーケティング、起業のみらずBPO業務および新規事業の立案に従事。
現在は、自らが代表を務める会社の経営の傍ら、経営管理および新規事業立案等の業務委託を請け負う

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かつて多くの中小企業で選ばれていた「有限会社」。しかし現在では、新たに設立することはできず、すべての新設法人は「株式会社」として登記されます。そんな中、既存の有限会社が「株式会社へ移行するべきか」で悩むケースも増えています。この記事では、有限会社から株式会社へ移行する際の具体的なメリットや違い、判断基準について分かりやすく解説します。

有限会社とは?

制度の背景と現在の位置づけ

有限会社は2006年の会社法改正により、新たに設立することができなくなった法人形態です。現在存在する有限会社は「特例有限会社」と呼ばれ、旧有限会社法のルールを引き継いで存続しています。

項目有限会社(特例有限会社)
設立可能かどうか新規設立は不可
法的扱い会社法上は「株式会社」の一種だが、特例規定が適用されている
商号社名に「有限会社」を必ず付ける必要がある
経営体制取締役1人での運営が可能

株式会社との主な違い

有限会社と株式会社では、見た目以上に運営や制度面での違いがあります。

比較項目有限会社株式会社
設立要件資本金3万円以上、取締役1名資本金1円以上、取締役1名以上
社名表記「有限会社」を使用する義務がある「株式会社」を使用する義務がある
役員任期任期なし(交代しない限り継続)原則2年または10年(定款による)
議決権の制限株式の譲渡制限などが柔軟に設定されている上場や資本参加を目的とするなら広く公開される場合もある
信用・対外的印象「古い会社」という印象を持たれることがある制度が現行に準拠しており、信頼性が高いとされることが多い

株式会社へ移行するメリット

1. 信頼性・対外的なイメージ向上

取引先や金融機関、採用活動において「株式会社」という名称は現代的で信頼性のある印象を与えやすくなります。特に新規取引や融資申請などではプラスに働くことが多いです。

2. 役員変更が柔軟にできる

有限会社では取締役の任期がありませんが、その分、交代の手続きが煩雑になるケースがあります。株式会社に移行することで、役員任期や交代手続きが制度化され、ガバナンス強化にもつながります。

3. 資本政策の自由度が増す

株式会社では、株式発行による資金調達が可能になります。成長ステージに応じて第三者割当増資なども視野に入れた経営が可能となり、事業拡大への選択肢が広がります。

メリット項目内容
信頼性の向上銀行・顧客・採用市場における印象が良くなる
資金調達の選択肢拡大株式発行による第三者資本の受け入れが可能
事業承継がしやすい株式を通じたスムーズな承継が可能(親族・M&A含む)
ガバナンスの明確化株主総会、取締役会を通じた経営チェック体制が整う

移行時に注意すべきポイント

株式会社への移行には、いくつか注意すべき点も存在します。

注意点項目内容
登記手続きの手間新たに株式会社を設立する形となるため、登記手続きや費用が必要となる
社名変更の必要性「有限会社」を外し、「株式会社」を含んだ社名に変更しなければならない
税務・社会保険手続き法人番号の変更はないが、届け出先や必要な書類が増える場合もある
定款の整備株式会社のルールに合わせて、定款を全面的に見直す必要があることが多い

移行するかどうかの判断基準

判断基準適した企業例
成長・資金調達を視野に入れている場合ベンチャー、スタートアップ、中堅企業
採用や取引先の信頼を高めたい場合人材募集を強化している、取引先の拡大を目指す中小企業
承継を見据えている場合次世代経営者へのスムーズな事業承継やM&Aを視野に入れる企業
特に変化の必要がない場合現在の業態や顧客基盤で安定しており、今後も変化の予定がない企業

まとめ

有限会社から株式会社への移行は、単なる名称の変更ではなく、将来の成長や経営戦略に関わる重要な選択です。信頼性の向上や資金調達の柔軟性、事業承継のしやすさなど、現代の経営環境にフィットするメリットが数多くあります。移行には一定の手間が伴いますが、長期的に見れば十分な価値があります。自社の方向性に照らして、前向きに検討してみましょう。