かつてベンチャー企業や中堅企業の上場先として注目されていた「ジャスダック市場」。一方で、「マザーズ」という成長企業向けの市場も存在していました。2022年の東証市場再編により両市場は統合されましたが、その背景や違いを理解することは、現在のスタンダード市場・グロース市場の選定にも役立ちます。本記事では、ジャスダックの基本的な特徴やマザーズとの違い、そして再編後の位置づけについて分かりやすく解説します。
ジャスダックとは?
歴史と特徴
ジャスダック(JASDAQ)とは、かつて東京証券取引所が運営していた新興企業向けの市場で、中小企業や地域密着型の企業の上場が多く見られました。元々は店頭株式市場として始まり、のちに東証が運営を引き継ぎました。
項目 | 内容 |
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市場名 | JASDAQ(Japan Association of Securities Dealers Automated Quotations) |
設立年 | 1963年(店頭登録制開始)、2004年に東証と統合 |
対象企業 | 中堅企業、地域企業、安定成長志向の企業 |
特徴 | 安定経営・黒字実績が重視され、審査基準は比較的厳しめ |
マザーズとは?
成長企業向けの上場市場
マザーズ(Market of the high-growth and emerging stocks)は、成長性の高いベンチャー企業の資金調達を支援するための市場で、黒字実績がなくても将来性があれば上場が認められる点が特徴です。
項目 | 内容 |
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市場名 | マザーズ(Mothers) |
設立年 | 1999年 |
対象企業 | 成長段階のスタートアップ、ベンチャー企業 |
特徴 | 赤字でも上場可能、将来の成長性やビジョンが評価される |
ジャスダックとマザーズの違い
比較項目 | ジャスダック | マザーズ |
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対象企業の属性 | 安定成長型の中堅企業 | 急成長を目指すベンチャー企業 |
上場基準 | 黒字実績や内部統制などが重視される | 業績よりも成長可能性が評価される |
投資家層 | 比較的保守的な個人投資家が中心 | リスクを取る投資家や機関投資家が多い |
上場後の義務 | 堅実なIRや開示が求められる | 高いボラティリティと情報発信の継続が必要 |
信用度と安定性 | 比較的高い | 市場評価による株価変動リスクが大きい |
東証市場再編とその影響
2022年4月、東京証券取引所は以下の3市場体制に再編され、ジャスダックとマザーズはそれぞれ新市場へ移行しました。
旧市場 | 移行先市場 | 位置づけ |
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ジャスダック(スタンダード) | スタンダード市場 | 安定成長企業向け、基本的なガバナンス・財務体制を重視した市場 |
マザーズ | グロース市場 | 成長志向の企業向け、市場の将来性とチャレンジ精神を評価する市場 |
この再編により、企業の上場選択肢は再定義され、より明確な基準で市場を選べるようになりました。
まとめ
ジャスダックは、安定成長を志向する企業のための上場市場として長年機能してきました。一方、マザーズは将来の成長性に重きを置いた市場であり、両者はそれぞれ異なる性格を持っていました。現在は東証スタンダード市場とグロース市場に統合されていますが、旧市場の特徴を理解することは、自社の上場戦略を考えるうえで重要な指針となります。企業の規模やビジョンに応じた市場選びが、上場後の成功につながるカギとなるでしょう。