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有給休暇の前借は違法?対応方法も解説

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監修者
竹村 直浩
竹村 直浩

<経営管理のプロ・数多の組織経営>
会計事務所経験からキャリアをスタート。
約30年間にわたりデータベースマーケティング、起業のみらずBPO業務および新規事業の立案に従事。
現在は、自らが代表を務める会社の経営の傍ら、経営管理および新規事業立案等の業務委託を請け負う

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従業員から「まだ付与されていない有給休暇を前もって使いたい」という申し出を受けた場合、企業としてどう対応すべきか悩むこともあるでしょう。有給休暇の「前借」が法律に違反するのか、あるいは運用として認められるのか——正しい知識がなければトラブルや誤解を招く原因となります。本記事では、有給休暇の前借が違法かどうかの法的な位置づけと、企業が取るべき対応方法をわかりやすく解説します。

有給休暇の前借とは?

定義と基本的な考え方

有給休暇の前借とは、法定の付与日数が発生する前に、将来付与される予定の休暇を先に取得することを指します。一般的には、まだ半年の勤続期間を満たしていない新入社員が休暇を希望する場合などに発生します。

項目内容
定義本来付与されていない有給休暇を「仮に付与」し、事前に取得させる運用
主な対象場面入社半年未満の社員、新たな有給付与日前の休暇希望など
法的な取り扱い法定の有給休暇ではなく「任意の特別休暇」として扱うことが原則

有給休暇の前借は違法なのか?

観点解説
労働基準法との関係法的には「前借」という概念はなく、未付与の有給休暇を法定休暇として扱うことはできない
違法性の有無労使合意のうえで「特別休暇」として付与する形であれば違法ではない
注意点前借した休暇を後に発生する有給から「自動的に相殺」する運用は慎重に対応が必要
実質的なリスク法的な有給と誤認させた場合、割増賃金の誤計算やトラブルの原因になり得る

前借を認める場合の対応方法

項目対応内容
特別休暇として扱う就業規則に「前借制度」や「特別休暇」の規定を設けておく
労使の同意を得る労働者本人の希望と会社の承認があってはじめて制度化される
書面記録を残す前借日数・対象期間・取得理由などを記録に残し、後日の誤解を防ぐ
自動相殺の注意後日付与される有給から自動的に控除する場合、本人に事前説明し書面同意を得ることが望ましい

前借を許可しない場合の選択肢

前借を制度化していない企業では、以下のような代替手段で対応することが可能です。

代替手段説明
欠勤扱いとする休暇を無給で処理する方法で、法的に問題はないが従業員の不満につながる可能性あり
事前付与とする有給休暇を実際の発生日より前に便宜的に付与するが、リスク回避のためには「特別休暇」として扱うのが適切
積立休暇制度を導入独自に有給とは別の休暇制度を設け、前借や急な休みに柔軟に対応できるようにする

前借に関するトラブルを防ぐためのポイント

対応策内容
就業規則の整備前借の可否、対象範囲、取得手続きなどを明文化することで、社内運用を統一できる
社内周知の徹底従業員に対して制度内容を正しく理解させるためのガイドラインや説明会を実施する
勤怠管理システムの活用有給残日数や前借分を正確に記録し、人的ミスを防ぐ
柔軟な働き方の推進前借を必要としないよう、リモートワークやフレックス制度などの柔軟な制度を併用する

まとめ

有給休暇の前借は、法律上「有給」として扱うことはできませんが、企業が任意に制度化した「特別休暇」として認めることは可能です。重要なのは、就業規則での明確なルール化と、従業員との合意形成です。法的リスクを避けながら、従業員の働きやすさにも配慮する制度設計と運用が、トラブルのない職場づくりに繋がります。