新しい働き方として定着しつつある「在宅勤務」ですが、制度導入にあたって「就業規則は変更する必要があるのか?」「どのような項目を整備すべきか?」と悩む企業も少なくありません。就業規則は従業員との契約関係や労務管理の基本となる重要なルールブックです。特に在宅勤務のように働き方に大きな変化がある場合は、法的リスクを避けるためにも明文化が欠かせません。本記事では、在宅勤務導入時に就業規則をどう見直すべきか、変更のポイントをわかりやすく解説します。
在宅勤務導入時に就業規則は変更すべきか?
原則として「変更が必要」
在宅勤務を新たに導入する場合、勤務場所・時間・業務指示の方法などが通常勤務と異なるため、就業規則に反映させる必要があります。労働基準法第89条では、労働時間や賃金に関する事項などは、常時10人以上の労働者がいる事業場において就業規則への記載が義務付けられています。
項目 | 内容 |
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法的義務の有無 | 労働条件に大きな変更がある場合は、就業規則の変更が必要 |
対象企業 | 常時10人以上の従業員がいる企業は、就業規則の届出が義務付けられる |
労使トラブル回避策 | 明文化により、勤務時間や残業、費用負担などの認識齟齬を防止できる |
在宅勤務における就業規則で整備すべき主な内容
項目 | 解説 |
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勤務場所の定義 | 在宅勤務が「自宅」であること、会社が許可した場所であることなどを明記する |
勤務時間と管理方法 | 始業・終業の時刻、休憩、残業の管理方法などを具体的に記載し、勤怠システム等の利用も明示する |
費用負担の取り決め | 通信費・電気代・備品等の費用について、会社と従業員の負担区分を明確にする |
業務報告・指示の方法 | チャット、メール、Web会議等での報告・連絡・相談のルールを定める |
セキュリティ対策 | 情報漏洩防止のため、パソコン使用ルールやデータ持ち出し制限を定めておく |
就業規則違反時の対応 | 在宅勤務中のサボタージュや私用利用などへの懲戒規定をあらかじめ明文化する |
就業規則変更時の手続きの流れ
ステップ項目 | 解説 |
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1. 規定内容の検討 | 在宅勤務の運用実態や対象範囲を社内で整理し、ルール案を作成する |
2. 労働者代表への意見聴取 | 就業規則の変更には、労働者代表からの意見書の提出が必要(同意は不要) |
3. 労働基準監督署へ届出 | 常時10人以上の従業員がいる場合は、変更後の就業規則を労基署に届け出る |
4. 社員への周知徹底 | 全従業員に対して変更内容を通知し、社内イントラや書面等で確認可能な状態にする |
在宅勤務の就業規則を整備しないリスク
リスク内容 | 解説 |
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労働時間管理が曖昧になる | 過剰労働や未払い残業の発生、労基署からの是正勧告のリスクがある |
コンプライアンス違反 | 就業規則未整備により、労働契約内容との齟齬やトラブルが発生するおそれがある |
会社側の管理責任が問われる | 在宅勤務中の労災や業務ミスに対し、明文化がないと責任範囲が不明確になり不利になる可能性がある |
セキュリティ事故の発生 | IT機器の私的利用や情報流出リスクが高まり、企業の信頼を損ねることにつながる |
まとめ
在宅勤務の導入は、単に働く場所を変えるだけではなく、就業形態そのものを見直す取り組みです。そのため、就業規則の整備は必須事項となります。企業側は、働きやすさと安全性の両立を図るためにも、就業規則の変更内容を明確にし、従業員への説明と運用を徹底することが求められます。制度とルールの両輪で、安心できるテレワーク環境の構築を進めていきましょう。