人材開発支援助成金(人材育成支援コース)とは、厚生労働省が実施する雇用関係助成金の一つで、事業主が従業員に対して職務に関連する知識や技能を習得させるための訓練を実施した場合に、訓練にかかる経費の一部および訓練中の賃金の一部が国から助成される制度である。
法的根拠
本制度は、雇用保険法第63条および職業能力開発促進法第11条・第12条に基づき、企業における人材育成を促進し、労働者のキャリア形成を支援することを目的としている。
対象事業主の要件
対象事業主の主な要件:
・雇用保険の適用事業所であること
・労働保険料を滞納していないこと
・職業能力開発推進者を選任していること
・事業内職業能力開発計画を策定・周知していること
これらを満たしていない場合、助成金の申請はできないため、事前の準備が重要である。
対象となる訓練類型
人材育成支援コースには、以下の3つの訓練類型がある(令和7年度現在)。
1. 人材育成訓練:OFF-JTによる10時間以上の訓練。職務に関連したスキルアップを目的とする。
– 賃金助成:1人1時間あたり1,000円
– 経費助成:75%(賃上げ実施で85%)
2. 認定実習併用職業訓練:OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練。
– 経費助成:60%(賃上げ時75%)+OJT助成最大25万円
3. 有期実習型訓練:有期契約労働者を正社員化する目的で行う訓練。
– 経費助成:最大100%+OJT助成10~13万円
訓練時間の要件
・OFF-JTによる訓練時間が10時間以上であること
・休憩時間や移動時間は含まれない
・1日の訓練時間に上限はないが、実際に訓練が行われている必要がある
賃金助成の要件
・訓練期間中、通常の賃金を支払っていること
・訓練時間が所定労働時間内であること
・訓練中の賃金が通常勤務と同額以上であること
・所定時間外でも割増賃金を支払えば対象となる
経費助成の対象経費
【対象となる経費】
・外部講師への謝金・手当
・施設・設備の借上費
・教材・教科書費
・外部研修機関への受講料(eラーニング・通信教育を含む)
【対象外】
・役員・自社社員講師の人件費
・交通費・宿泊費
・備品購入費(PC、机など)
賃上げ要件の詳細
・訓練修了後、6か月以内に賃金を引き上げること
・対象は訓練を受けた全員
・基本給または定額手当での引上げに限る
・賞与や一時金、通勤手当は対象外
・賃金比較が可能な書類(賃金台帳など)を保管すること
手続きの流れ・提出期限
【訓練計画届の提出期限】
・訓練開始日の1か月前までに提出(最長6か月前から可)
・土日祝の場合は前営業日が期限
・郵送は消印日付で判断
【支給申請期限】
・訓練修了日の翌日から起算して2か月以内に提出
・土日祝日の場合は翌営業日が期限
電子申請について
・「雇用関係助成金ポータル」により電子申請が可能
・電子申請にはGビズIDが必要
・計画書を紙で提出した場合、電子での支給申請は不可
・電子申請では申請履歴の閲覧や進捗確認が可能
キャリアアップ助成金との併用
・有期実習型訓練修了後の正社員化時、キャリアアップ計画の再提出は不要
・訓練計画届がキャリアアップ計画を兼ねる
・正社員化後6か月の賃金支払い後に申請可能
・両助成金の要件を満たす必要があるため事前確認が重要
必要書類
主な必要書類:
・訓練計画届(事前提出)
・事業内職業能力開発計画
・訓練実施状況報告書
・出勤簿・タイムカード
・賃金台帳
・雇用契約書・労働条件通知書
・訓練カリキュラム
・受講者名簿
・経費の支払いを証明する書類(領収書など)
不支給となる主なケース
・訓練期間中に対象労働者を事業主都合で解雇した場合
・訓練期間中の賃金未払いや遅延
・教育訓練機関から金銭・クーポンを受け取った場合
・訓練内容が職務に関連していない場合
・訓練時間が10時間未満の場合
・労働関係法令に違反している場合



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