助成金(じょせいきん)とは、主に国や地方自治体などの公的機関が、特定の目的に基づいて事業者や個人に対して交付する返済不要の金銭的支援のことである。
助成金は融資とは異なり返済義務がなく、一定の要件を満たすことで支給される制度である。
【概要】
日本における多くの助成金は、労働保険料(雇用保険料)を財源としており、原則として労働保険の適用事業所であることが交付の前提条件となっている。
ただし、助成金の中には労災保険のみに加入していれば申請可能なものも存在する。
助成金は、雇用の維持や人材育成、職場環境の改善、生産性向上などを目的として設けられている。
企業の健全な労務管理を促進し、政策目標の実現を支援するための制度である。
なお、助成金と類似の制度に補助金がある。補助金は主に税金を財源としており、採択制(審査制)であるため、要件を満たしても必ず支給されるとは限らない点が助成金との相違である。
【主な支給要件】
助成金の支給には、以下のような共通要件がある。
・労働保険の適用事業所であること
・個人事業主であっても、要件を満たせば申請可能である
・雇用保険に加入している従業員が1名以上いること(役員のみの企業は対象外)
・労働保険料の滞納がないこと
・出勤簿、賃金台帳、雇用契約書、就業規則など、法令で作成が義務付けられた帳簿を整備していること
・雇用契約書または労働条件通知書を作成していること
・労働基準法など関係法令を遵守していること
・一定期間内に会社都合による解雇(離職区分1A、3Aなど)を行っていないこと
【初めて助成金を申請する場合】
従業員を初めて雇用し、今後助成金を申請する企業は、以下の準備が必要である。
・労災保険・雇用保険に加入すること
・就業規則を整備すること
・雇用契約書、出勤簿、賃金台帳を整備すること
【助成金の分類】
厚生労働省が実施する雇用関係助成金は、約70種類にのぼり、目的に応じて次の8分類に大別される。
採用関係、研修・人材育成関係、雇用維持関係、働き方改革関係、障害者関係、高齢者の雇用継続関係、育児・介護関係、安全衛生関係。
【代表的な助成金】
・キャリアアップ助成金
有期雇用やパートタイム労働者などの非正規雇用労働者を正社員化するなど、処遇改善を行う企業に支給される。
・人材開発支援助成金
事業主が従業員に職業訓練・教育訓練を実施した場合に、訓練経費や賃金の一部を助成する制度。
・両立支援等助成金
育児・介護休業を取得しやすい職場づくりや男性育休の取得促進、職場復帰支援を行う企業を対象とする。
・業務改善助成金
最低賃金の引き上げや生産性向上を目的として、設備投資費用の一部を助成する制度。
【実務上の留意点】
・助成金は課税対象(雑収入)
・申請から支給までに3〜6か月かかる
・会社都合退職があると申請できない場合あり
・目的が異なれば併給可能
・帳簿不備や未払い残業があると不支給になることがある
・振込日は指定できない
・助成金制度は年度ごとに変更される
【電子申請】
厚生労働省「雇用関係助成金ポータル」からオンライン申請が可能。
GビズIDの取得とアカウント作成が必要。
【相談窓口】
助成金の相談は、各都道府県労働局またはハローワークで受け付けている。
【関連項目】
雇用保険、社会保険労務士、厚生労働省、補助金


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