人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)

事業展開等リスキリング支援コース

人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)は、厚生労働省が実施する「人材開発支援助成金」の一部で、企業の事業展開やDX・GX推進に伴う新分野への人材育成を支援する制度である。令和4年度に創設され、令和8年度末までの時限措置として実施されている。

概要

本助成金は、企業が雇用する労働者に対し、新たな分野で必要な知識や技能を習得させる職業訓練(OFF-JT等)を実施した場合に、訓練経費および訓練期間中の賃金の一部を助成する制度である。

助成率および助成額

区分経費助成率賃金助成額(1人1時間あたり)年度上限
中小企業75%1,000円1事業所あたり1億円
大企業60%500円同上

対象となる訓練

以下のような訓練分野が対象となる。

・事業展開に伴う訓練:新規事業・新分野進出に向けた技能取得

・DX対応訓練:デジタル技術、データ分析、システム運用スキル等

・GX対応訓練:省エネ・脱炭素・カーボンニュートラル関連技術

支給要件(主な条件)

・職業能力開発推進者の選任:社内で人材育成を統括する責任者を選任する。

・事業内職業能力開発計画の策定・周知:従業員に職業訓練の実施計画を明示する。

・訓練経費の全額負担:訓練費はまず企業が全額支払い、助成は事後支給。

・計画届の提出期限:訓練開始の6か月前から1か月前までに労働局へ提出。

・対象労働者:雇用保険被保険者であることが必要。

活用事例

業種訓練内容訓練時間助成金額効果
運送業第二種普通免許取得38.5時間196,700円福祉タクシー部門を創設し、高齢者送迎事業を開始
医療法人児童発達支援管理責任者研修40時間340,000円新規福祉事業を立ち上げ、地域貢献に寄与
IT企業UI/UXデザイン研修228時間594,800円新たにデザイン部門を設立し、提案力を強化

Q&A(主な論点)

質問回答
同じ訓練を別の社員が受けても対象になるか?内容が事業展開やDX・GX推進に資するものであれば対象となる。
訓練後に事業展開を行わなかった場合は?3年以内に実施予定であれば対象。結果として実現しなくても返還は原則不要。
定額制オンライン講座の利用は可能か?他訓練との併用は不可。定額制サービス単独での実施が必要。
訓練の開始・終了時間が所定労働時間と異なる場合は?所定外の時間は賃金助成の対象外。労働契約上の扱いに注意。
どのような訓練がDX/GXに該当するか?ICT導入、データ活用、環境負荷削減など、業務の効率化・脱炭素化に資するもの。

申請時の注意点

・計画届提出期限:訓練開始の1か月前まで。開始後は申請不可。

・助成金支払時期:支給は訓練完了後、審査を経て後払い。

・賃上げ加算:訓練修了後に5%以上の賃上げ、または資格手当導入で加算。

・定額制訓練の上限:1人あたり年間3回まで。

参考文献

・厚生労働省『人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)パンフレット(令和7年度版)』

・厚生労働省『事業展開等リスキリング支援コース 支給要領(令和7年4月1日版)』

・厚生労働省『人材開発支援助成金 活用事例集』

・厚生労働省『事業主様向けQ&A(令和6年10月版)』

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