概要
両立支援等助成金(出生時両立支援コース)とは、男性労働者の育児休業取得を促進し、仕事と家庭生活の両立を支援するために設けられた厚生労働省の助成制度です。通称は「子育てパパ支援助成金」や「男性育休促進助成金」とも呼ばれます。
対象事業主(中小企業の定義)
| 業種 | 資本金または出資の総額 | 常時雇用する労働者数 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他の業種(製造業等) | 3億円以下 | 300人以下 |
助成内容
第1種(男性労働者の育児休業取得支援)
| 区分 | 要件 | 支給額 |
| 1人目 | 連続5日(うち所定労働日4日)以上の育児休業+雇用環境整備措置を2つ以上実施 | 20万円 |
| 2人目 | 連続10日(うち所定労働日8日)以上の育児休業+3つ以上実施 | 10万円 |
| 3人目 | 連続14日(うち所定労働日11日)以上の育児休業+4つ以上実施 | 10万円 |
| 備考 | 雇用環境整備措置を4つ以上実施した場合、1人目でも30万円に引上げ |
第2種(男性育休取得率向上支援)
以下のいずれかを達成した場合、60万円が支給されます。
A:男性育休取得率が前年から30ポイント以上上昇し、かつ50%以上
B:子が出生した男性労働者が5人未満の事業所で、2年連続70%以上の取得率を達成
※「該当年度」とは、原則として4月1日~翌年3月31日の事業年度を指します。
情報公表加算
育児休業の取得状況(取得者数・取得率など)を厚生労働省のサイト「両立支援のひろば」で公表することで、2万円が加算されます。公表は第1種または第2種の申請と同時に行う必要があります。
雇用環境整備措置
| 区分 | 取組例 |
| ① 育児休業に関する研修の実施 | 管理職・社員向けに育児休業制度の周知や取得促進をテーマとした研修を開催する。 |
| ② 相談体制の整備 | 育児休業に関する相談窓口を社内に設け、誰でも気軽に相談できる体制を整える。 |
| ③ 育児休業取得事例の収集・提供 | 実際の取得事例を社内掲示やイントラネットで共有する。 |
| ④ 制度および取得促進方針の周知 | 社内報や就業規則改定を通じ、育休取得を推進する方針を明確にする。 |
| ⑤ 業務配分・人員配置の見直し | 育休者の業務を他の社員が過重負担にならないよう再配分・簡素化・外部委託などを行う。 |
申請手続の流れ
- 社内制度の整備:就業規則に育休制度を明記し、相談体制を構築。
- 育児休業の取得:男性労働者が子の出生後8週間以内に連続5日以上の育休を取得。
- 書類提出:休業終了日の翌日から2か月以内に都道府県労働局へ申請(期限を過ぎた場合は支給対象外)。
- 審査・支給決定:書類審査後に支給が確定。
活用例
ある中小企業では、男性社員の育休取得が進まない現状を踏まえ、管理職向けの研修を実施し、代替業務の見直しを含む2つの雇用環境整備措置を導入。その結果、男性社員が子の出生後8週間以内に連続6日間の育休を取得。申請後、審査を経て20万円の助成金が支給されました。
制度の目的と意義
本制度は、男性が育児休業を取得することを「特別な行動」ではなく「自然な選択」として社会に根づかせることを目的としています。企業にとっては、職場の柔軟性やチームマネジメントの質を高め、働きやすい環境づくりを推進する契機となります。
参考文献・リンク
・厚生労働省「両立支援等助成金 支給要領(令和7年10月1日時点)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
・厚生労働省「両立支援等助成金(出生時両立支援コース)Q&A(2025年度)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/000103533.html
・厚生労働省「両立支援のひろば」 https://www.ryouritsu.mhlw.go.jp/



コメント