人生の長期化や働き方の多様化により、一度のキャリアで終わらず「第二のキャリア(セカンドキャリア)」を考える人が増えています。ただしセカンドキャリアは個人の責任だけではなく、企業のサポートや制度整備も重要です。本記事では、セカンドキャリアの概念、企業が取るべき支援策、人材採用におけるポイントを整理して解説します。
セカンドキャリアとは何か
セカンドキャリアの定義と時代背景
セカンドキャリアとは、最初の職業やキャリアを終えた後、またはライフステージの変化に応じて新たな職や働き方を選び直すキャリアのことを指します。たとえば定年後の再就職、育児や介護を挟んでの復職、専門職への転身、副業や起業など、さまざまな形があります。近年は平均寿命の延びや多様な働き方へのニーズの高まりを受け、セカンドキャリアは決して“終活”ではなく人生の新たなフェーズとして捉えられるようになってきています。
なぜ今セカンドキャリアが注目されるのか
少子高齢化による労働人口減少や多様な価値観の広がりにより、企業にとっても長年勤めた従業員の経験やスキルを活かすことは重要な戦略になっています。また、個人にとってもライフステージの変化(育児、介護、趣味や適性の変化)に応じて働き方を柔軟に選べる環境の必要性が高まっています。こうした社会環境の変化が、セカンドキャリアという考え方を広める背景となっています。
企業が取り入れるべきセカンドキャリア支援策
企業が従業員のセカンドキャリアを支援することには多くのメリットがあります。以下のような支援策が代表的です。
| 支援策 | 目的と内容 |
|---|---|
| 再教育・リスキリング支援 | 新しい分野への挑戦やスキルの再構築を支援(講座受講費補助、研修提供など) |
| キャリア相談・制度導入 | キャリア相談窓口設置、キャリア設計支援、ジョブカード活用、転職・副業支援など |
| 働き方の柔軟化 | フレックスタイム、短時間勤務、リモートワーク、転職準備休暇など、多様なライフスタイルに対応 |
| 再雇用・雇用延長の促進 | 定年後の再雇用、嘱託雇用、パートタイム雇用などの制度整備 |
支援策の意義
こうした支援を通じて、従業員は人生設計や働き方に合わせたキャリアを描きやすくなり、会社にとっても経験豊富な人材の流出防止、定着率向上、人材活用の柔軟性確保につながります。
セカンドキャリア人材の採用メリットと注意点
採用による企業側のメリット
- 即戦力として活躍できる人材の確保
- 異業種・異職種からの採用により、新しい視点や価値観、イノベーションの創出
- 経験豊富な人材による若手指導や組織活性化
- 多様な人材受け入れによる企業イメージの向上
採用時の注意点と対応
- 従来の若手中心の採用基準・評価制度では適切に評価されない可能性がある → 経験・スキル・適性を明確に評価できる制度の見直し
- 働き方や価値観の違いによるミスマッチのリスク → 柔軟な働き方の導入や採用前後のコミュニケーション強化
- 世代間ギャップやチーム調整の必要性 → 多様性を尊重する組織文化づくり
年代別にみるセカンドキャリアの目的と支援のあり方
年代やライフステージによって、セカンドキャリアに期待することや必要な支援は異なります。
- 30代:スキルアップやキャリアの方向性模索 ⇨ 新しい分野への挑戦支援、教育・研修
- 40代:専門性や責任あるポジションへのステップアップ ⇨ 研修・配置転換、キャリア相談
- 50代:定年を見据えた再就職や安定、経験の活用 ⇨ 再雇用制度や柔軟な働き方、再教育支援
こうした段階を想定し、企業は年代ごとの支援施策を設計することで、従業員のライフステージに応じた柔軟なキャリア支援が可能です。
企業にとってのセカンドキャリア導入のポイント
- 従業員のキャリアビジョンを可視化する仕組みを整える
- 支援策や制度を一律ではなく、個人の事情や希望に合わせた柔軟な対応を導入
- 再教育や研修、相談窓口など、実践的なサポート体制を整備する
- 採用や評価の仕組みを見直し、多様な人材を正しく評価・活用できる仕組みを構築する
こうしたポイントを押さえることで、企業は多様な人材を受け入れやすくなり、従業員の満足度やパフォーマンスの向上につながります。
将来を見据えたキャリア設計としてのセカンドキャリア
人生100年時代、多くの人にとって「仕事=一生同じ会社」というモデルは過去のものとなりつつあります。セカンドキャリアを前向きに捉え、企業が支援制度を整え、多様な働き方や再挑戦を後押しすることで、個人も企業も持続的に活躍できる可能性が広がります。
このようなキャリア設計を社会全体で支えていくことで、より多様で柔軟な働き方が当たり前となる未来につながるでしょう。
まとめ
セカンドキャリアとは、第一のキャリアを終えた後やライフステージの変化に応じて、新たな働き方や職を選ぶキャリアのことです。企業が再教育や働き方の柔軟化、キャリア相談といった支援策を導入することで、従業員の再就職や新たな挑戦を後押しできます。また、セカンドキャリア人材の採用は即戦力や多様な価値観の導入につながる一方で、評価制度や働き方の見直しが必要です。
人生とキャリアが長く、多様になる今こそ、セカンドキャリアを前向きにとらえ、企業と個人がともに成長できる環境づくりが重要です。


