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業務改善助成金は個人事業主1人でも対象になる?実際の対象要件と申請時の注意点とは

助成金
監修者
竹村 直浩
竹村 直浩

<経営管理のプロ・数多の組織経営>
会計事務所経験からキャリアをスタート。
約30年間にわたりデータベースマーケティング、起業のみらずBPO業務および新規事業の立案に従事。
現在は、自らが代表を務める会社の経営の傍ら、経営管理および新規事業立案等の業務委託を請け負う

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業務改善助成金は、従業員の賃上げと業務効率化を後押しする制度として注目されています。しかし、個人事業主が1人で事業を運営している場合、制度の対象となるのか疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。本記事では、個人事業主が業務改善助成金を活用するための条件や、申請時の注意点について詳しく解説します。

業務改善助成金とは

業務改善助成金は、賃上げを実現する中小企業や小規模事業者を支援する制度です。具体的には、事業場内で最も低い賃金を一定額以上引き上げる場合に、必要となる設備やソフトウェアの導入費などが助成の対象となります。たとえば、レジやPOSシステム、勤怠管理ソフトなど、業務効率化を図るための機器・システムの導入が該当します。

また、労働時間短縮や生産性向上を実現する取り組みも助成対象として認められており、単なる設備投資ではなく「賃金アップと業務改善」が一体となった計画が求められます。近年では、リモートワーク環境の整備やクラウドサービスの導入など、デジタル対応への支援も拡充されています。

こうした背景から、業務改善助成金は一時的な経費削減だけでなく、中長期的な事業基盤の強化を図る手段として注目されています。特に小規模な事業者や人手不足に悩む現場では、人的コストの上昇と業務効率化を両立するための貴重な制度です。

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業務改善助成金の対象事業者と個人事業主の位置付け

業務改善助成金は、法人だけでなく、個人事業主も対象となります。ただし、いくつかの要件を満たしている必要があります。その要件は主に以下の表の通りです。

区分該当条件
企業形態法人・個人を問わず中小企業または小規模事業者であること
雇用関係雇用保険適用事業所であり、被保険者としての従業員が存在すること
賃金計画最低賃金引き上げを伴う計画が策定されていること
設備投資生産性向上に直結する取り組みが実施されること

個人事業主であっても、上記をすべて満たしていれば申請の対象になります。特に、従業員を雇っているかどうかが大きなポイントです。自らが経営者であり、かつ労働者を雇っていない場合、制度の対象外となる可能性が高いです。

個人事業主1人でも申請できる?その可否と条件

個人事業主として一人で事業を営んでいる方が、この制度を利用できるかどうかは、「労働者を雇っているか」に左右されます。助成金の支給対象となるのは、雇用保険に加入している従業員が存在し、その賃金引き上げを伴う改善計画を実施する事業者です。つまり、自身一人で業務を行っている個人事業主は対象外となります。

以下の表で対象例を整理します。

事業者の状況助成対象か
一人で運営する個人事業主(従業員なし)対象外
アルバイトのみ雇用(雇用保険未加入)対象外
雇用保険に加入した従業員を1名以上雇用している対象内

このように、制度の中心にあるのは「賃金を支給されている雇用保険対象者の存在」です。対象となる従業員の給与を引き上げ、それに伴う業務改善投資を行うことで初めて助成対象となるため、前提条件をよく確認することが不可欠です。

業務改善助成金の申請手続きのステップ

業務改善助成金を受けるには、明確な段階を踏む必要があります。主な流れは以下の通りです。

  1. 現状分析と課題の特定
  2. 賃金引き上げと業務改善の計画立案
  3. 必要書類の準備と申請
  4. 交付決定後に設備導入・改善実施
  5. 実績報告と支給申請

必要な書類には、事業計画書、賃金台帳、雇用保険加入を証明する書類などがあり、内容に不備があると申請却下となるリスクもあります。加えて、交付決定前に改善策に着手してしまうと、助成対象外となるので注意が必要です。

以下は主要書類の一覧です。

書類名内容
交付申請書事業の基本情報と支給希望額などを記載
実施計画書賃金引き上げの計画と業務改善の具体的内容を明記
雇用保険台帳対象従業員の雇用保険加入状況を証明
賃金台帳賃金水準の現状と改善後の比較資料
設備投資見積書導入する機器の費用と目的を明確に示す

他制度との違いと併用の注意点

業務改善助成金以外にも、中小企業向けの補助制度は多く存在します。ただし、これらを併用する場合は「対象経費の重複」を避けなければなりません。下記の表で代表的な助成金制度とその特徴を比較します。

制度名目的業務改善助成金との併用可否
キャリアアップ助成金非正規雇用者の正規化・待遇改善条件次第で可能
小規模事業者持続化補助金販路開拓や業務効率化支援重複経費は不可
働き方改革推進支援助成金働き方改革実現のための設備導入など類似経費は原則不可

制度の趣旨が重複する場合でも、目的が明確に異なる計画であれば併用が認められることがあります。念のため、申請前に労働局または商工会議所等に確認を取るのが望ましいです。

活用事例と実務上のポイント

実際に業務改善助成金を活用した事業者の事例から、制度利用のヒントを得ましょう。

【事例】
飲食店を運営する個人事業主Aさんは、アルバイトを1名雇用(雇用保険加入)しており、レジ業務の負担軽減とスタッフの時給アップを目的に、セルフレジ導入を検討していました。事前に労働局と相談し、対象となる設備の範囲を確認した上で、助成申請を実施。交付決定後に機器を導入し、賃金を30円引き上げ、助成金を受給しました。

この事例においてもわかるように、「事前準備の丁寧さ」と「制度理解の深さ」が成功のカギとなります。誤解しやすい点として、交付前に設備を設置してしまうと対象外になる点が挙げられます。スケジュール管理と関係機関への事前相談が重要です。

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まとめ

業務改善助成金は、中小企業や小規模事業者、そして個人事業主にとっても、生産性向上と従業員の処遇改善を両立させるための非常に有効な制度です。ただし、「個人事業主だから申請できる」という単純な構図ではなく、雇用保険に加入した従業員を雇っているかどうかが大きな分かれ道となります。

一人で事業を営んでいる場合、助成金の対象外になるケースが多いものの、雇用保険に加入しているスタッフが1名でもいれば、申請が可能になります。そのため、制度を活用したい個人事業主は、まず自分の事業所が「雇用保険適用事業所であるか」「賃金引き上げ計画が立てられるか」を確認することが重要です。

申請には、明確な計画書と必要書類の準備が求められ、交付決定前の着手は助成対象外となります。また、他の助成制度との併用を検討している場合は、経費の重複に注意しながら進める必要があります。

以下に、本記事での要点を再整理します。

項目要点
対象となる事業者中小企業、小規模事業者、個人事業主(ただし雇用者あり)
助成の要件雇用保険加入の従業員が存在し、賃上げ計画と業務改善を伴うこと
申請の注意点計画策定と事前申請が必須。交付決定前の実施は対象外
対象となる改善内容例POS導入、業務ソフト、勤怠管理システム、自動レジ等
他制度との併用経費の重複がなければ併用可(制度趣旨の違いを明確に)

業務改善助成金は、単なる資金援助ではなく、事業改善の方向性を明確にし、持続可能な経営体制を構築する機会でもあります。個人事業主であっても、「ただの制度」としてではなく、経営を見直すチャンスとして前向きに活用していくことが、長期的な事業安定への第一歩になるでしょう。